「AIを使った感染対策」アジアと欧米の差の背景 中国や韓国ではビッグデータを効果的に活用

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さらに中国政府は地方によって異なっていた健康コードを統一し、新規感染者が出ても24時間以内にクラスターを完全追跡できるようにするとしています。韓国は感染者に接触した可能性のある人を1人残らず見つけるために、市街の監視カメラや携帯電話の位置情報、クレジットカードの使用履歴まで、ビッグデータを駆使しました。そうやって見つけ出した接触者全員に、ひたすらPCR検査を繰り返したのです。

この徹底した対策によって、韓国は経済を閉鎖することなく、ひとまずは感染収束にこぎつけることができたのです。つまり、パンデミックと闘うことは、情報戦なのです。

もし、ウイルスに感染している可能性がある人を全員リストアップできたならば、彼らを隔離してケアすればいいだけです。そのリストを作るために必要なのは、接触履歴、移動履歴、体温など、さまざまな個人情報です。この情報こそが問題の核心です。

欧米ではプライバシーの侵害を危惧する

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とくに欧米でCOVID─19(新型コロナウイルス感染症)が蔓延した理由は、こうした情報がなかったからです。欧米社会では政府に個人の情報を把握されることでプライバシーを失ってしまうのではないかと、人々がとても恐れたのです。

しかし、AIにはビッグデータを集めて誰が感染しているか見極めること、人々のプライバシーをきちんと守ること、その両方を実現することができます。技術的にはすでに可能ですので、将来は正しいやり方ではじめるべきです。

韓国では新型コロナが世界中で猛威をふるっていた4月に総選挙がありましたが、与党の「共に民主党」が大勝利をおさめました。

これは現政権のビッグデータを駆使したパンデミック対策を国民が支持した結果でしょう。対照的に、こうした効果的な対策を取らなかった国では、多くの国民が政府に怒りを覚えています。もちろんアメリカもです。

マックス・テグマーク マサチューセッツ工科大学(MIT)教授

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Max Tegmark

宇宙論の研究者だったが、超知能AIによる人類絶滅の危険性に注目し、近年はAI研究に軸足を移している。2014年に、AIの安全な研究を推進するための非営利団体「生命の未来研究所(Future of Life Institute,FLI)」を共同で設立。2017年に発表された「アシロマAI原則」の取りまとめを同団体が先導した。邦訳された著書に『数学的な宇宙―究極の実在の姿を求めて』(講談社、2016年)があり、数学的存在そのものが、宇宙であるとする斬新な「数学的宇宙仮説」を論じて脚光を浴びた。

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