「AIを使った感染対策」アジアと欧米の差の背景 中国や韓国ではビッグデータを効果的に活用

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ところが、政府が無能であるとわかったのです。100年前に比べると想像もできないほど、世界は複雑に、そして密接につながっています。どこかの誰かの問題が、瞬時にしてみんなの問題になるということです。あっという間にパンデミックになりました。

私たちは自らの文明を、もっとレジリエント(強靭で柔軟)なものにしなければなりません。人類は思っていたほどレジリエントではなかった。これが今回のパンデミックから得た教訓です。私たち、特に欧米に住む者は、パンデミックに対してもっとレジリエントであるはずだと思っていました。

グローバルな世界に生きている私たちにとって、レジリエンスがますます重要になってくるのは、リスクがどんどん大きく複雑になっているからです。それはテクノロジーの進化によるものです。馬車と自動車を比べれば、どちらがより危険で複雑なリスク管理が必要か、言うまでもないでしょう。

アジアではビッグデータを効果的に活用

今回のようなパンデミックにおいて、AIで何ができたのか、将来的には何ができるのかを考えてみましょう。

中国や韓国の新型コロナ対策を見てみると、ビッグデータが非常に役立っていました。日本でもそうかもしれませんが、特にアジアではビッグデータと機械学習を効果的に取り入れているようです。

代表的なのは、contact tracing(接触追跡)です。スマートフォンの位置情報や監視カメラの映像などから、検査で陽性と判明した人が、どこで誰と近接した距離で接触したのか調べることができます。

中国では「健康コード」と呼ばれるQRコードを利用したアプリを多くの人が使っています。出退勤時や商業施設や駅などに入るときに、この健康コードを提示するのですが、信号のように赤・黄・緑のいずれかの色でコードが表示されます。地方によって基準が少し違うようですが、基本的には「緑」は健康に問題なし、「黄」はコロナ感染者との濃厚接触あり、入国直後で隔離期間中など、「赤」は感染者という具合です。

中国では飛行機や高速鉄道のチケットを買うのに身分証の提示が必要なので、政府は座席位置に至るまで国民の移動履歴を把握しています。また、地下鉄の車両や商店にもQRコードが提示してあるので、それをアプリで読み込んでおけば、感染者と濃厚接触した可能性があるときは、通知してもらえるというわけです。

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