コロナ後「GAFAやBAT」に続く急成長企業の息吹 時間を節約してくれる存在がこの先大きくなる

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その根拠は、アメリカを見れば明らかだ。失敗を許し、イノベーションを受け入れる文化があるからこそ、アメリカには世界中から優秀なエンジニアたちが集まってくるわけである。

次の1000億ドル長者は

さて、ではGAFAやBATに続く企業はどのようなものになるのだろうか? この点についてギャロウェイ氏は、「次の1000億ドル長者は、テクノロジーとイノベーションをヘルスケアに投資し、応用する人」だと予測している。

なぜなら、ヘルスケアの進化は時間の節約になるからです。これまで病院で無駄にした待ち時間や、治療にかかった時間を、他のことに使えるからです。今、大半の人がコスト節約に重点を置きますが、ビッグウィナーとなるのは、時間を節約してくれる企業です。(65ページより)

いささか唐突にも思えるが、例えば余計なCMを見なくて済む動画配信のストリーミング・メディアが大きな成功を遂げていることを考えてみれば、時間の節約にそれだけ重要な意味があるかを察することは可能だ。

ヘルスケアについても同じで、スマート・カメラとAIがあれば時間短縮は容易に実現できる。スマート・カメラを利用してX線で肺を撮影し、その画像を世界のどこかにいる放射線科医に送る。次いでペイパルで支払いをし、報告書を手に入れると、主治医が20~30分のうちに報告書を読み、異常があればすぐに治療する――。例えば、そんなことも可能になるのだ。

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ただし“NEXT GAFA”を占う前に、いま一度、認めなければならないことがあるそうだ。すなわち現実問題として、生活のほとんどすべてをGAFAに頼っているという事実である。

私たちがイノベーターを偶像崇拝し、その対象であるGAFAが政府をも動かす資金力を持っていることは、“危険な組み合わせ”だというのだ。もちろん、GAFAが何十億人もの生活の価値を高めているのは間違いない。だが彼らの目的は、がんの撲滅や貧困の根絶ではなく、つまるところ金儲けに主眼があるからだ。

だとすればやはり、「テクノロジーとイノベーションをヘルスケアに投資し、応用する人」の登場に望みをかけるしかない。彼らの活躍は、コロナ後の世界を生きていくすべての人が望むところなのだから。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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