1日20万件のPCR検査能力が日本に必要な理由 政府コロナ分科会の小林慶一郎教授の提言

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――マクロ経済や財政政策に話題を変えます。米欧日や新興国を含めて、ほぼすべての国でコロナ対策による財政赤字が急拡大し、公的債務残高が膨張しました。今はまだ世界はコロナ危機への対応に神経を集中させていますが、いずれ各国で積み上がった公的債務をどう管理するかという問題もフォーカスされそうです。

結局、膨大に膨れ上がった借金は次世代の人たちの負担になる。仮に将来、その返済を行わず、ほったらかしにすれば、物価水準によって調整されるだろう。つまり、名目値で固定されている借金の実質的価値がインフレによって低下し、国の借金の負担を減らすということだ。

だがその際、世界各地でかなり無秩序にインフレ率が上がり、各国における程度の違いによって、インフレ率の高い国から資本が逃避することになりかねない。それはグローバルな金融市場や経済を大きく動揺させることになる。

トービン税(金融取引課税)の導入も

そのため、アフターコロナを展望すると、財政政策で国際協調を行い、無秩序なインフレによる財政調整を防止する必要があると思う。たとえば、為替や金融資産などの取引に薄く広く課税するトービン税を導入し、それを、コロナ対策のために発行した国債の償還財源とすることなどが考えられる。

こうした課税は、各国がバラバラに行うと、課税する国から課税しない国へ資本が逃避するため、国際協調によって逃げ道をふさぐことが重要だ。すべての国が同じ時期に同じ税率でスタートする必要がある。

――ただ、米中対立やトランプ大統領の姿勢もあって、現在は国際協調がうまく行っているとは思えません。

米中はまったく世界の舞台でリーダーシップを取れていない。国際的な動きを作るとすれば、日本やオーストラリア、東南アジアなどアジア太平洋地域と欧州がうまくコーディネイトして、米中の背中を押すことが期待される。欧州では、ドイツがEU(欧州連合)域内での財政統合に融和的になってきたことは(国際協調実現への)追い風だと思う。

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