中国ネット出前大手が自動運転車を開発する訳 美団点評、3~5年後の大規模運用を目指す

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ネット出前大手の美団点評では、1日約3000万件の注文に中国各地の70~80万人の配達員が対応している(写真は美団点評のウェブサイトより)

ネットで出前を注文すると、人間ではなくロボットが自宅に料理を届けてくれる。そんな光景が数年後にも実現するかもしれない。ネット出前大手の美団点評のチーフ・サイエンティストを務める夏華夏氏は、7月10日、財新を含む複数のメディアの取材に応じ、同社が無人の自動運転車やドローンを使った料理の市内配達を研究していることを明らかにした。

すでに2020年2月から北京市順義区で数台の自動運転車の実地運用をスタート。技術的な問題を検証・解決したうえで、遅くとも3~5年後の大規模運用を目指す。ドローンについても北京市と深圳市で試験飛行を始めており、同じく3~5年後に多数の都市で実用化をもくろむ。

現在の自動運転技術はアルゴリズム、センサー、データ処理能力などまだ多くの課題を抱えている。このため、美団点評は人間を運ぶ自動運転車の開発は行っていない。夏氏によれば、むしろ荷物専用の低速の自動運転車が最も実用化に近いという。

人間の置き換えではなく役割分担を模索

自動運転車のコストに関して夏氏は、「長期的には十分な輸送力を確保することのほうが重要だ」と語った。現在、美団点評に集まるネット出前の注文数は1日当たり約3000万件に達し、対応する配達員の数は全国で70~80万人に上る。仮に5年後も人手による配達だけに頼っていたら、配達員の確保が追いつかなくなるリスクがある。

一方、技術革新や量産効果で自動運転車のコストは3~5年後には大きく下がる可能性が高い。だが、夏氏はロボットで人間を置き換えることは考えていない。将来は地点間の路上輸送を自動運転車が行い、配達員はレストランで料理を受け取って自動運転車に積み込む段階と、自動運転車から料理を下ろして注文主に届ける段階を役割分担する道を模索している。

本記事は「財新」の提供記事です

というのも、建物内の移動はロボットにとってとりわけハードルが高いからだ。例えば、ガラス製の回転ドアをくぐるのは人間にとっては容易だが、ロボットには極めて複雑な情報処理が求められる。「実際の配達現場の複雑さは、実験室や現実をまねたテストコースとはまったく比較にならない」。夏氏はそう強調した。

(財新記者:葉展旗)
※原文の配信は7月10日

財新 Biz&Tech

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