中国の物流最大手の順豊が、ネット出前サービスへの本格参入を準備していることが明らかになった。同社は最近、法人向けの弁当の団体購入・配達サービス「豊食」のアプリを公開。5月11日、順豊は財新の取材に対して「現時点では順豊グループの従業員向けだが、機が熟したら一般顧客にもサービスを提供したい」と回答した。
豊食の運営は、順豊が2019年3月から開始した同一都市内の即時宅配事業「順豊同城」(訳注:日本のバイク便のようなスピード配送事業で、3キロ圏内なら平均30分での配送をうたう)のプラットフォームを活用する。アプリはまだテスト運用の段階で機能も不完全だが、すでに「出店無料」を掲げて飲食店の加盟を募り、賞金が当たるキャンペーンで法人顧客の開拓も始めている。
中国のネット出前サービスは、騰訊(テンセント)が出資する「美団点評」と阿里巴巴(アリババ)傘下の「餓了麼」(ウーラマ)の2社が大きなシェアを握る。新型コロナウイルスが中国で流行した1月下旬以降、各地のロックダウン(都市封鎖)によりネット出前の利用は急増した。
手数料の高止まりに飲食店から不満
「コロナ危機」をきっかけに、ネット出前は中国の飲食店にとって生き残るために不可欠な販路となった。と同時に、2社寡占による手数料の高止まりに飲食店の不満が膨らみ、他社の新規参入に期待する声が高まっていた。それだけに、順豊の参入は多くの外食チェーンの関心を引きつけており、西洋式ファーストフードのピザハット、フライドチキンの徳克士、中国式ファーストフードの真功夫、牛丼の吉野家などすでに100社近くが豊食に出店している。
もっとも、物流企業のネット出前への参入はこれが初めてではない。2015年には同一都市内宅配の「達達」が独自のネット出前のプラットフォームを立ち上げたが、たちまちIT(情報技術)系の先行企業の返り討ちに遭った。
「ネットのプラットフォームを自ら構築するのは難しすぎる。競争相手はテンセントやアリババなど資金を惜しみなく投じてくるIT業界の巨人だからだ。達達に勝ち目はなかった」。ある物流業界の関係者はそう振り返る。そんななか、順豊がどんな戦い方を見せるか注目される。
(財新記者:銭童)
※原文の配信は5月11日
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