「地元志向の若者増加」を手放しで喜べない事情 「心の豊かさ」と「経済的繁栄」どちらを取る?

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地元志向の若者が増えれば、日本だけじゃなく地方も衰退する可能性がある(写真:alps/PIXTA)

日本では近年、生まれ育った地元で暮らし働こうという「地元志向」が強まっています。新型コロナウイルスに伴うテレワークや新しい生活様式の普及などから、この地元志向のトレンドがさらに強まりそうです。今回は、コロナが加速させる「地元志向の状況」と「3つの問題点」について解説していきます。

コロナで強まる「地元志向」

コロナ感染拡大を受けて、3月以降、日本人の暮らしが大きく変わりました。以前は電車に揺られて通勤していたのが、テレワークで自宅や近所のカフェで仕事をします。買い物は都心のデパートに出かけず、近所の商店街で済ませます。銀座や新宿で呑むのははばかられるので、自宅でZoom呑み。土日も旅行など遠出を控えて、近所をウォーキング。ここ数ヵ月で、日本人の行動半径はめっきり狭くなりました。

仕事や日常生活だけではありません。人生の重要な選択においても、地元志向が急速に高まっています。今回、東京の4つの大学の関係者に取材したところ、全員が口を揃えて「来年の入試では地方からの志願者が減り、入学者に占める首都圏出身者の割合はさらに上昇しそう」と懸念していました。

就職・転職も変わります。東京本社のあるエンジニアリング会社は、昨年まで全国・世界から幅広く人材を募っていましたが、コロナで採用方針の転換を迫られています。採用担当者は、今後の採用について次のようにコメントしました。

「中途のグローバル採用は、当面ストップです。新卒は、技術系は大学の研究室つながりで採用しているのでこれまでとそんなに変わりませんが、事務系については激変することが確実です。地方からの志望者が大幅に減っており、結果的に首都圏出身者の割合がかなり高くなりそうです。コロナが終息してもどうなるのか、ちょっと読めません」

緊急事態宣言が解除され、6月から徐々にコロナ前の生活に戻りつつあります。ただ、新しい生活様式が定着しつつありますし、第2波・第3波への懸念もあり、地元志向のトレンドは今後も続くと予想されます。

「地元が好きで、地元に住み、地元で働くって、別にコロナとかに関係なく当然のことでしょ」と思いがちですが、そうでもありません。

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