和歌山の「オンライン宿泊」がウケている理由 1泊1000円「予約がとれない宿」になっている

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この日はさらにスペシャルイベントとして、ドイツ・ハノーヴァー在住のヴァイオリニスト杉村香奈氏のオンライン・コンサートが行われた。イベント料金として、宿泊料に加え1人当たり1000円が必要となるが、これはやはりコロナの影響で仕事がなくなり、困っているというアーティスト本人に送られるそうだ。

【写真上】ドイツから届けられたヴァイオリンのコンサート。フリーのヴァイオリニストで音楽講師の杉村香奈氏による演奏 、【写真下】スペシャルイベント「星空案内」のスクリーンショット画面。既存のアプリの機能を余すところなく活用し、サービスを提供している(写真:WhyKumano Hostel & Cafe Bar)

「杉村さんは最初、お客様として来てくれたんです。このように、宿泊者には海外在住の日本人も多いんですよ。海外は日本と違って外出制限が非常に厳しいということも、理由として大きいと思います。また『日本語がしゃべりたいから』という理由もありました」(後呂氏)

イベントは音楽のほかにもいろいろあり、例えば「ステラリウム」という天体を表示するソフトウェアを用いた「星空案内」は非常に好評だったという。これも平時、実際に星空ガイドを仕事にしている人に協力してもらった。

このように、結論としてオンライン宿泊は、リアルに似せようという発想はそもそもない、まったく新しい価値の提供であり、しかも細部までよく工夫されたインタラクティブ・エンターテインメントだということがわかった。

旅には、新しい人との出会いや新しい体験といった、ドキドキする「刺激」の要素と、土地の産物を味わいのんびりくつろぐ「リラックス」の要素がある。オンライン宿泊は、その前者を取り出したサービスと言えるのではないか。

筆者はその夜、高まった緊張のゆえか、眠りに就きにくくなってしまった。

「オンラインサービス」に必要なテクニック

レジャーなどに出かけにくい今の時期、こうした体験を求めている人は多いだろう。ほかのゲストハウス取り入れたいと考えるところが増えているのもうなずける。ただし、一筋縄ではいかないことが予測される。まずは、多彩なアプリを駆使し、スムーズにオンラインでのおもてなしをするためには、高度なテクニックが必要となる。また、オンラインでの人あしらい、コミュニケーションには、オフラインとはまた異なる要素が必要になりそうだ。

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「オンライン市場はできたばかりで、テクニックを知らない人が多い。このビジネスで経験値を積むことができたのは私にとって大きなメリットでした。リアル宿泊休業中も副業と言えるものはしていませんが、一度、『オンラインアドバイザー』として、地元のイベントに協力したことがあります」(後呂氏)

7月1日からリアルでの宿泊も受け付けており、すでにオンライン宿泊をした人も訪問しているそうだ。今後もリアルとオンラインの双方を稼働する。実際に宿泊している人と、オンラインで宿泊する人の出会いなども生まれる。

旅、宿泊、人の出会い方にさまざまな新しい形をもたらすと思えるこのサービス、実はたくさんの新しいビジネスの萌芽を含んでいる。さまざまな業界において、ヒントになりそうだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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