「2月末から押し寄せた予約キャンセルの連絡の中で、最も多かったのが『行きたいけど行けない』という声です。みんなステイホームで、旅や交流という楽しみが失われている。ゲストハウスは何ができるのか、休業以外の選択肢はないのか、と考えて、オンライン宿泊という可能性に挑戦してみようと」(後呂氏)
スタート時点では、利用者は知人やSNSのコミュニティーが中心。しかし、口コミで認知が広がり、やがてメディアで取り上げられるや、予約が殺到した。以来、連日満室状態が続いている。1回に募集する宿泊人数は6〜7人。週に5〜6日稼働しており、6月末時点で69回、約430人が利用している。リピーターも多く、中には4回もリピートしている人も。
「普段から旅でゲストハウスを利用しているような方が多いですね。でも一部、既存客とは違うニーズの方もいらっしゃいます。ペットを飼っているからとか、旅好きだったけど、結婚して子どもが生まれて行けなくなった、などの理由で、そもそも旅に行けない人。
若い頃はユースホステルによく泊まっていたというシニアの方もいらっしゃいました。今は若い人ばかりだから利用しにくいけど、オンラインなら気兼ねがないとのことで……。広い層に対し、利用するためのハードルがとても低いサービスだと言えますね」(後呂氏)
1泊1000円で、日に6000〜7000円の収入
1泊1000円で、日に6000〜7000円の収入になるが、これでは固定費を賄うのが精いっぱい。オンライン宿泊のビジネスは後呂氏とスタッフで行っており、オンライン宿泊の接待だけでも2時間を要する。そのほか準備にかかる時間を含めると、採算はとれない。
「将来のためのPR費だと考えています。利用料1000円には、実際に訪ねていただいたときに乾杯できるよう、ワンドリンクサービスも含まれています。旅行業界は全体が打撃を受けており、『未来の旅行チケット』といったサービスもありますよね。支援の気持ちから購入してくださるのですが、私は、純粋にポジティブな気持ちで訪ねてもらいたいな、と思うんです」(後呂氏)
しかし当初から気になっていたのが、説明を聞いただけでは、オンライン宿泊が魅力的に思えないという点だ。
その土地に足を運び、空気を感じ、産物を味わうことに旅の楽しみがあるのではないだろうか。パソコンやタブレット上に映る動画のみで、どうやってそれらを再現するというのだろうか。
それを検証するため、筆者自身が1泊してみた。以下、簡単にオンライン宿泊の流れをご紹介しよう。
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