「熱中症予防ゼリー」が画期的だと言えるワケ 機械工具商社と駄菓子メーカーが「コラボ」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2019年10月、野田さんは、ノダキと同じ名古屋市西区にある菓子メーカー、共親製菓の専務、安部隆博さんに案内されて工場を見学した。

同社はベストセラー商品『さくらんぼ餅』をはじめ、こんにゃくや寒天を使ったゼリー、いわゆる駄菓子の製造・販売を手がけている。こちらも創業73年の老舗メーカーだ。野田さんと安部さんは名古屋市内の経営者が集まる会合で知り合い、たまに連絡を取り合う間柄だった。

共親製菓のベストセラー『さくらんぼ餅』(写真:共親製菓)

「工場でゼリーの製造工程を見たとき、これだ!と思いました。スティック状のゼリーにすれば場所を取らないし、気軽に塩分を摂ることができるのではと。すぐに安部さんに話を持ちかけました」と、野田さん。

塩飴や塩タブレットなど塩分補給菓子はすでに1つの市場を築いており、冬場ののど飴と同様に需要拡大していくと思った安部さんは、申し出を快諾。こうして塩分補給のゼリー、『塩ゼリー(仮)』のプロジェクトがスタートした。

「塩飴などは一般家庭だけではなく、工場などの現場でも食べられていることを知りました。スーパーやドラッグストアの棚に並ぶのは、大手メーカーのものばかりですが、ゼリーで勝負を挑んでみようと思いました」と、安部さん。

「しょっぱさ」を消しておいしくすることが課題

前にも書いたが、工場で働く人々が塩飴があっても食べない最大の理由は、おいしくないことである。安部さんはオレンジやグレープのフレーバーで味付けしたゼリーを試作して、野田さんに提案した。ところが、うだるような暑さの中では甘いものも食べたくなくなる。話し合いを重ねた結果、爽やかなレモン味に決定した。

厚生労働省は熱中症予防対策として、「0.1~0.2%の食塩水、ナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク又は経口補水液等を、20~30分ごとにカップ1〜2杯程度摂取することが望ましい」(厚生労働省通知「平成27年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について」)としている。

この厚労省推奨の数値通りにすると、どうしてもしょっぱくなる。それを消しておいしく食べられるようにするのが課題だった。

「塩分(ナトリウム)の吸収を助けるブドウ糖や疲労回復に効果があるクエン酸のほか、レモン味をより強く感じるようにと、ビタミンAとD、E、B1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、葉酸、パントテン酸を入れました。結果、熱中症だけではなく、風邪の予防にも効果が見込めますから、夏場に限らず通年利用してもらえるのではないかと期待しています」(安部さん)

筆者も実際に食べてみたが、ほのかな酸味と甘みが絡み合う複雑な味わいが口の中で広がってスッと身体に吸収していく。甘すぎないので食べ飽きることはない。実によく考えられていると思った。ゼリー1本と水分100mlを摂れば、厚生労働省推奨濃度と同等の電解質補給ができるという。

いちばん驚いたのは、水分の量。通常、こんにゃくゼリーなどには容器の中に水分が入っている。味や食感、のど越しを引き立てるものである。その反面、開封時に水分が飛び出して手がベタついたりすることもある。工場などの現場ではそれがストレスになるのだ。

次ページすべてが現場目線で作られたゼリー
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事