「1人10万円」定額給付金をめぐり大混乱した訳 自治体関係者や住民を悩ませた「世帯」概念

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住民基本台帳上の世帯は、同じ住所に住んでいても台帳上、別であれば、別世帯となる。しかし、世間一般がイメージする世帯とは1つの家に同居する家族全員を指すだろう。

マンガ「サザエさん」で例えると、磯野一家は世間一般のイメージでは1つの世帯だが、仮にマスオ・サザエさん夫婦と、波平・フネ夫婦が住民基本台帳に別世帯として登録されていれば、2つの世帯が存在することになる。後者の場合、今回の給付金は波平さんにサザエさん一家7人分の申請書がまとめて届くのではなく、波平さんとマスオさんにそれぞれ1通ずつの申請書が届くことになる。

前出の首都圏の担当者は「世帯には、血族や姻族にない赤の他人でも『同居人』という形で入れるし、逆に世帯を別にする場合もある。大半の世帯が夫婦2人と子供であっても、独居の老人だったり、親世代と一緒だったりする世帯もあって、結局は各世帯の個別事情に1つひとつ付き合わされる。そしてそこに踏み込まないと、申請が適正であるのかわからない」と話す。

世帯をあえて分離するわけ

一緒に住んでいながら世帯をあえて分離するのは、国民健康保険や後期高齢者医療、介護費用の面で、世帯の所得(年収)によって保険料が軽減される仕組みがあるからだ。例えば、世帯を分離して高齢者単独世帯とし、世帯の年収を意図的に下げれば、国民保険料の負担は下がる。ただ、家族手当をもらえなかったり、高額医療費の合算などができないデメリットもある。

今回も、世帯主に給付金を送れば終わり、というわけにいかないケースがあった。DV(ドメスティックバイオレンス)や高齢者虐待、児童虐待の場合だ。いずれも深刻な事情があって住民票上の住所とは別の場所に居住しており、世帯主(虐待者)に給付金を送るわけにはいかない。

都内のある区の担当者は「自治体の福祉部門が(DVや虐待などの)事情をつかんでいるケースもあるが、そうでないと、申請がない限り書類だけでは(給付の適否を)判断できない」と明かす。

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