一方、自民党のマイナンバープロジェクトチームは6月にマイナンバーの活用方策を提言する報告書をまとめ、6月に閉幕した国会には特定給付金の給付名簿作成法案を提出した。
報告書と法案のとりまとめにあたった自民党の新藤義孝代議士は法案の狙いについて、「何年も前からデジタル社会をつくる成長戦略の大きな柱として検討してきた。法案が実現すれば、マイナンバーを使って給付対象者の名簿をあらかじめ国もつくれる。給付を受ける口座を1つ指定してもらい、『口座名簿』をつねにアクティブな形で国が電子システムの中にため込んでおくことも可能になる」と話す。
だが、こうした動きによって本当に問題は解決するのだろうか。
混乱を招いた「世帯」という概念
実は、今回の給付金をめぐる作業で自治体関係者が苦労し、住民が混乱する原因となったのが「世帯」概念をめぐる認識のズレだった。
総務省は特別定額給付金を「住民基本台帳に記録されている世帯の世帯主」に給付すると定めた。給付金の支給は迅速かつ簡素に行う必要があり、「世帯主は住民基本台帳に記載されており、申請や振込の手続きを簡明にできる」(総務省特別定額給付金室)からだ。
仮に個人に支給するとなると、申請書類などの事務が激増し、意思表示の困難な高齢者や幼児への給付をどうするかという問題も出てしまう。ちなみに、住民基本台帳に基づく日本の人口は1億2744万人に対し、世帯総数は5852万世帯である(1月1日現在)。
だが、世帯主に給付すると決めたことで、自治体の担当者のもとには「同居しているのに、なぜ申請書が届かないのか」「申請書に家族全員の記載がないのはなぜか」といった問い合わせが寄せられた。
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