同期はマーケティングの有名ゼミ出身者が多く、アメリカマーケティング協会の定義みたいなものをすらすら説明するんですよ。すごいヤツがいるなあ、と思いました。
--留学したいという志望動機でよく採用してもらえましたね(笑)。最初は大阪で営業を担当されていましたが、留学の夢はどうなったのでしょう。
やはり、事はそんなにやさしくありません。メーカー系はどこも同じですが、最初は全員営業現場に出されます。
入社案内にはニューヨークにある合弁会社ブリストル・マイヤーズの写真が大写しで載っていたり、海外での展望などが書かれているのに、現実はクーラーもついていないライトバンで大阪の営業先を回りスーパーの床にはいつくばって値札付けするといった泥臭い仕事をしているわけです。得意先の営業車に冷房がないのに、クーラーをつけた車に乗るわけにはいかない(笑)。
話が全然違うと思いましたね。
周りを見ると40~50代の先輩が自分と同じ仕事をしています。人は環境の生き物ですから、自分もこうなったらどうしようかと毎日心配で憂鬱でした。5月病ならぬ7月病です。
留学についても、「大阪から留学したヤツなんていない。東京の賢いヤツが時折行くことはるが、あきらめた方がいい」と先輩に言われてしまいました。入社3~4カ月で辞める勇気もなかったのですが、自分の夢のためにはこのままでいいのかと日々悶々としていました。
そこで、当時ライオン顧問の酒井具之さんという方にご相談したんです。甘いことを言うなとしかられることを覚悟していました。ところが、「若い時に夢を持ち、現実とのギャップに悩むことはいいことだよ。問題意識を持たないことのほうが問題」と言ってくださいました。