「ただ、仕事がどんなものか突き詰めてから判断してもいいのでは。1年がむしゃらに働いてみなさい。本質や会社のあり方が見えてくる。1年後にまた会おう。それでも今と同じ気持ちなら別の道を一緒に考えよう」っておっしゃってくれた。
酒井さんのおかげで気持ちがスッとし、とにかく1年は頑張ってみようと思いました。
--気を取り直して1年、何か見えてくるものはありましたか。
気持ちが変わると気合いが変わり、不思議と声も大きくなって目線も上向いてくるんです。面白いことに変化は周りにも伝わるんですね。
得意先の社長から、スポーツ新聞の“一球入魂”という文字を見せられ、「君はこの頃こういう感じだな」と言ってもらえたときはすごくうれしかったです。
また、週2回、英会話学校に通っていたのですが、伝統的な古い会社で新人が先輩より早く帰ることはたいへん勇気のいることです。最初は生意気だと言われていたのですが、次第に「早く退社しないと学校に遅れるぞ」と先輩から声をかけてくれるようになりました。
自分自身、マーケティングの面白さにも気づき始めましたね。ライオンは本当にいい会社で、夜飲みに行ってもみんなまじめにマーケティングについて熱く議論するんですよ。自分もだんだん興味がわいて、担当する現場でのマーケティングはどうあるべきかなどを考えるようになりましたし、本もたくさん読みました。
マーケティングは人を研究する学問。人に興味がありましたし、マーケティングをライフワークにしたい、留学するなら専攻はマーケティングにしようと思うようになりました。
やがて人事にも気持ちが伝わったのか、入社2年目で留学試験を受けろとの通達があり、翌年、晴れて留学が決定したのです。
(写真:田中庸介/アフロ)
日本コカ・コーラ株式会社取締役会長。1954年奈良県生まれ、同志社大学文学部卒業、米国コロンビア大学ビジネススクールにてMBA取得。77年ライオン入社、販売とマーケティング関連職を歴任。91年フィリップモリスの食品事業部門であるクラフト・ジャパン副社長、日本事業の統括責任者を務める。94年、日本コカ・コーラ入社、副社長コンシューマーマーケティングナショナルブランド担当。2001年社長就任。06年会長就任。08年NTTドコモ顧問就任。
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