国内生産の8割超を輸出するマツダは、欧米などでの販売の落ち込みを受け、国内全工場で3月下旬から生産調整に入った。6月は昼勤のみの稼働となっている。日本、タイ、メキシコの3拠点における4〜6月の生産台数は8.4万台と昨年同時期の実績(約31万台)に比べ7割強減り、減産規模はすでにリーマンショック時以上だ。
マツダは休業となる夜勤の従業員には、雇用調整助成金を活用し賃金額の90%相当を支払っている。製造現場に派遣社員はおらず、非正規では期間社員のみが約1790人在籍。トヨタと同様、「非正規を含め雇用は維持する」(広報)方針だ。
ほかの自動車メーカーも雇用維持に重きを置く。SUBARU(スバル)は国内の生産拠点である群馬製作所の生産要員・約1万人のうち、期間従業員が2500人弱、派遣社員が1000人程度と非正規率が3割を超える。「自己都合による退職は一定数あるが、法律上更新可能な契約については更新している」(広報)という。
体力ない下請け、背に腹変えられず
しかし、体力の限られる下請けは事情が異なる。
トヨタグループのある1次下請け(愛知県)では、製造現場の約2割を非正規の従業員が占める。このうち、間接雇用の派遣社員については、4月以降は契約更新をしていない。同社社長は「トヨタからは『雇用維持に最大限の配慮を』と言われているが、5~6月は仕事量が半減しており、少しでも変動費を圧縮したい」と本音を口にする。
マツダのある2次下請けメーカー(広島県)は、3月末に生産現場で働く従業員の15%に当たる派遣社員約10人の契約を打ち切った。「4~5月の仕事が5割以上も減る事態を前に苦渋の決断だった。仕事量が回復しさえすれば、同じ人に戻ってきてもらいたい」と社長は話す。
中国地方にある人材派遣会社では、2019年秋時点で約130人いた自動車関連の下請け企業への派遣人数が20人を切るまでに減った。同社の取引先はマツダや、もともと販売不振が続いていた日産自動車の下請けが多い。「減産が本格化した4月以降、派遣契約の解除や更新を見送る企業が相次いだ。こんな環境なので、今は代わりの派遣先もない」(同社社長)。