自動車業界、コロナ禍で続く「派遣切り」の実態 減産長期化で雇用の維持ができない下請けも

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新型コロナ発の自動車不況を受け、体力の限られる下請け企業で相次ぐ派遣切り。真っ先にそのしわ寄せを受けているのが、外国人労働者だ。

ある30代後半のネパール人男性は、群馬県内にあるスバルの1次下請けメーカーで事務職として働いていたが、4月末に派遣切りに遭った。スバルが群馬製作所の稼働を一時停止した4月は、給料の6割相当の休業手当が出たという。しかし、「仕事がないからと言われて、製造系も事務系も派遣は4月末でみんなクビにされた」(男性)。

男性は失業保険を申請したものの、給付は早くて6月末となるため、太田市の支援制度で借りた約20万円でしのいでいる。3人の子どもがおり、すぐにでも仕事を見つけたいが、ビザの就労条件から事務職でしか働くことができず、言葉の壁もあって求職活動は進んでいない。

そもそも派遣社員として働いていたのも、日本語が十分にできず、求職活動のハードルが高いからだという。「仕事がなくなって今は大変。スバルの生産が回復すれば、新しい仕事が見つかるかもしれない」と事態の好転を祈るばかりだ。

生産調整は徐々に解除だが……

春先から始まった日系自動車メーカーによる国内生産調整は、徐々に減産ペースが緩和されつつある。トヨタは7月も3工場6ラインで2~6日間の稼働停止を予定するなど生産調整自体は継続するが、6月の減産規模からは大幅に改善する。7月の生産台数は当初計画比1割減(6月は同4割減)を見込む。生産の回復を受け、7月から期間従業員の新規採用を一部で再開する。

マツダは7月中に国内全工場で昼夜勤務体制に戻す。6月の国内生産台数は前年同月実績の4割程度だったが、7月には8割にまで戻る見込み。スバルは6月22日から本来の昼夜勤2交代制に戻した。輸出比率が低いホンダは国内生産への影響が比較的に少なく、7月の生産調整は3工場を対象に稼働を1〜4日停止する程度だ。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

主要輸出先のアメリカでの販売回復が遅れて7月も大規模な減産が続く日産を除けば、自動車メーカーの国内生産は徐々に改善方向に向かっている。下請けも6月途中から仕事量が徐々に増え始めた。

この数年、国内の製造業は深刻な人手不足に悩まされてきた。もちろん、自動車産業も例外ではない。「今は耐え忍んで非正規従業員の雇用も維持しておかないと、仕事量が戻ってきた時に再び人手不足で困るのが目に見えている」(自動車メーカー幹部)。

ただし、6月下旬に入り、テキサスなどアメリカの複数の州で新規感染者数が過去最高を更新するなど、新型コロナの収束は依然として見えないままだ。主要輸出先の欧米などで感染が再拡大すれば、現地販売の回復が遅れ、国内工場も輸出車を中心に再び大規模な生産調整を余儀なくされる。先行きは決して楽観視できない状況で、雇用の維持に向け、自動車業界は難しい局面を迎えている。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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