ネットでの住宅販売が現実味を帯びてきたワケ コロナ禍を経ていったいどのように変わるか
最後に、ハウスメーカーなどの住宅供給者だけでなく、住宅販売に関連する事業者にも上記のような顧客や事業者の置かれる状況に対応する動きが見られることを紹介しておく。
その1つが、バーチャル(VR)住宅展示場だ。日本ユニシスなどが運営する「マイホームマーケット」(2017年10月サービス開始)は、現在、住宅事業者10社がVRモデルハウスを出展。消費者がスマートフォンやPCなどで「内覧」できるようにしている。
既存住宅展示場運営会社がVR展示場
既存の住宅展示場運営会社でも取り組みが見られる。昨年8月にオープンした「イオンハウジングVR住宅展示場」(運営=エイトノットアンドカンパニー)がそれにあたり、これは「イオン幕張新都心」(千葉市)内にブースというかたちで出店しているものだ。
ブースの中で大手ハウスメーカー7社のモデルハウスをVRで見学できるうえ、コンシェルジュと呼ばれるスタッフに相談もできる。このため、相当数の来場者が得られ、出展ハウスメーカーの評価も高いという。
ちなみに、緊急事態宣言解除までイオン幕張新都心がスーパーなど一部を除き休館中だったが、この店舗のホームページ上に「おうちで住宅展示場」というコーナーを設け、サービス提供を継続していた。
以上2つは、住宅展示場へ足を運ぶことに戸惑いを感じる人たち、とくにまだ具体性を持たないものの、将来的に住宅取得に関心を持つ人たちの受け皿になっており、住宅事業者らの顧客獲得の新たな重要なチャンネルになる可能性を秘めている。
前出した大和ハウス工業の芳井社長は今後の住宅事業の戦略について、「これからはネット上で顧客が場所や時間を選ばず検討ができる商品開発がより重要になる」とも語っていた。
住宅が持つ特性上、顧客と住宅事業者のスタッフによる接触が皆無になることはありえないだろう。だから、完全にネット上で売買が完結する仕組みには、少なくとも近い将来にはならないと筆者は考えている。
ただ、ネットを含む最新技術などによる新たな仕組みづくりを柔軟に採り入れることが、コロナショックがもたらした「ニューノーマル」と言われる時代の変化の中で、住宅供給者と関連する事業者の生き残りを左右する条件の1つとなるに違いない、とも考えている。
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