ネットでの住宅販売が現実味を帯びてきたワケ コロナ禍を経ていったいどのように変わるか
ゴールデンウィークを含む期間は、住宅事業者にとっては年間で最大の集客が見込まれる時期であるが、今年に関しては緊急事態宣言などにより、イベント開催などの積極的な販促活動の展開ができなかった。
例えば、主要な営業拠点である住宅展示場のモデルハウスについては、地域にもよるが、ほとんどの事業者が閉鎖や予約来場などの措置を取り、それは宣言期間が終了した6月中旬時点でも継続されている。
事業者はネットによるリモート商談を実施するなどで、難局を乗り切ろうと必死の様子だった。そうした中で、大和ハウス工業にとってライフジェニックの成果は、希望の光に感じられたに違いない。
第2、第3の感染拡大が懸念されるなど今後も人と人の接触に制限が求められ、従来のような積極的な営業展開が難しい中で、住宅事業者にとってネット専用住宅のポジショニングは、以前より高まるものと見られる。
モデルハウス案内ロボットも登場
リモート商談についてもユニークな取り組みをしていた事業者がある。案内ロボット「ゴーカンナ君」を全国17カ所のモデルハウスに設置したアキュラホームがその事例の1つだ。消費者が専用タブレットを使い遠隔操作しながらロボットを動かしモデルハウス内を見学できる。スタッフに相談することも可能で、自宅にいながら住まいづくりの検討ができるという。
上記のように、モデルハウスなどでの対面商談を極力減らしながら、通常の注文住宅の販売、住まいづくりを進めるというのが、2つ目の「ネットで住宅を販売する」だ。
ところで、これらの取り組みは、新型コロナに対応するものとして登場したものではない。大和ハウス工業のライフジェニックが発売されたのは昨年11月。アキュラホームの無人モデルハウスに関する研究は6年前にスタートしていた。
そもそも戸建て住宅市場は今後、緩やかな減少局面を避けられない。そのため、いずれも働き方改革の推進が求められていることを含め、住宅事業者側に生産性の向上や業務の効率化の必要性が高まっていた、という背景から導入が進められていたものなのだ。
そして、もう1つ顧客側の変化も影響している。20~30代を中心とする若い顧客層の存在感の高まりだ。若い世代は、共働きの比率が高く、子育ての必要性も高いため、何事においても時間に追われている。
ましてや、彼らにとって住まいづくりの情報収集をネットで行うのは当たり前。そんな事情から、ネットを活用した営業スタイルの構築に取り組んでいた経緯があり、それがコロナ状況下に役立てられたわけだ。
冒頭に「ネットでの住宅販売はできない」という既成概念が覆されるかもしれない、と書いたのは、通信技術の進化も含め、上記のように住宅事業者、顧客の状況に大きな変化が生じているためである。
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