30代バイト女性がつぶやく崖っぷちコロナ戦記 個人も企業も変われる者だけが生き残る

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鈴木さんは1年半前から、個人経営のホルモン屋で働いてきた。勤務時間は夕方から深夜0時までで、週2〜3日は別の飲食店でランチタイムの単発アルバイトを入れていた。だが、コロナの影響で店は休業となり、再開時期はまったく未定。4月下旬から単発アルバイト探しを始めたところ、家の近くにある物流会社の募集を見つけた。

倉庫での作業は想像以上に大変だった。段ボール作りと梱包作業が中心で、「筋肉痛になったし、腱鞘炎にもなりかけた」(鈴木さん)。長時間立ちっぱなしで、足のむくみにも悩まされた。5月末まで週3日は勤務しながら、食品スーパーでも働いた。野菜の袋詰めや品出しが中心で週2〜3日、1日4時間の短時間勤務だったが、「気力、体力を考えると、それが限界。人手が足りておらず、やりがいは感じた」(同)。

鈴木美加子さん(仮名、36)は、アルバイト先の休業中に倉庫やスーパーで働き、収入を増やした(記者撮影)

6月からはアルバイト先のホルモン屋の営業再開に伴い復職している。4〜5月の休業期間中の給与が補償されることになり、鈴木さんは「結果的にいつもより収入が増えた。頑張って働いてよかった」と笑う。今の勤務先で働く前は3年間、焼肉屋でアルバイトしていたが、給与未払いで辞めている。「何も問題がなければ、今の慣れたお店で長く働きたい」と考えているが、保証などない。

北海道出身の鈴木さんが東京で1人暮らしを始めたのは5年前のこと。それ以前から各地を転々としてきたが、仕事は飲食店が多く、倉庫やスーパーの勤務は初めてだった。「今回のことでどこでも働けるとわかった。単発アルバイトでは飲食店以外の仕事も経験してみたい」(同)と心境の変化を語る。

50分の1に求人が激減した飲食店の代わりは?

コロナの影響は個人だけではない。企業の経済活動にも大きな影響を及ぼしている。会社設立3年目のベンチャーにとっては、存続を脅かすほどの衝撃だった。単発アルバイトアプリの「タイミー」を運営するタイミーは、1月に2万3000件あった飲食店の求人が、5月は450件と50分の1に激減した。飲食店やイベントのアルバイト募集を主力に、急成長を遂げてきただけに、コロナで状況は一気に暗転してしまった。

残念ながら6月に入っても「正社員だけで営業再開する飲食店が多く、アルバイトの求人案件は増えていない」(タイミーの小川嶺社長)。もっとも、その代わりに増えているのが、物流倉庫やコンビニエンスストア、スーパーという。外国人労働者の受け入れができないため、深刻な人手不足に陥る一方、コロナ禍で需要が増えたことで労働力が逼迫している。

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