近い将来、アメリカの証券取引所に上場している中国企業のうち31社が香港証券取引所に重複上場し、香港市場の時価総額を5570億ドル(約60兆円)押し上げる可能性がある――。6月14日、アメリカの金融サービス会社のジェフリーズがそんな調査レポートを発表した。
アメリカに上場している中国企業は現在251銘柄あり、時価総額は約1兆7100億ドル(約183兆円)に上る。しかし米中関係の悪化や瑞幸咖啡(ラッキン・コーヒー)の不正会計事件をきっかけに、アメリカの投資家は中国企業に対する不信感を深めている。アメリカ上院は5月20日、中国企業を念頭に置いた外国企業の上場規制強化法案を可決した。
そんななか、多数の中国企業が香港市場への重複上場を目指すのは、アメリカでの万が一の上場廃止リスクを分散させるためだ。中国企業というだけで疑いの目を向けられるアメリカより、香港のほうが企業価値を高く評価してもらいやすいという思惑もある。この6月にはゲーム大手の網易(ネットイース)、電子商取引(EC)2位の京東商城(JDドットコム)の2社が香港への重複上場を果たした。
アリババやシャオミも構成銘柄に採用へ
ただ現状では、香港市場を代表する株価指数である恒生(ハンセン)指数は構成銘柄に重複上場した中国企業を含めていない。また、重複上場企業は中国本土の証券取引所を通じて香港株を取引する「港股通」の制度の対象にもなっていない。このため中国本土の投資家は、ハンセン指数に連動するETF(上場投資信託)を通じた間接投資も、港股通を経由した直接投資も、重複上場企業に対してはできない状況になっている。
そこでハンセン指数の算出会社は、早ければ9月にも規定を見直し、重複上場企業を構成銘柄に含める計画を発表した。このことは、すでに重複上場を済ませたEC最大手の阿里巴巴集団(アリババ)、ネット出前大手の美団点評、スマートフォン大手の小米(シャオミ)などの有力銘柄が、今年中にハンセン指数に採用される可能性を意味する。と同時に、中国本土の投資資金がETFを通じて香港にどっと流れ込むだろう。
ハンセン指数の構成寄与度は、現時点では香港の基幹産業である金融サービス業が約48%、不動産および建築業が約10%を占めている。だが冒頭のジェフリーズのレポートは、「ハンセン指数は今後18カ月以内に(香港を代表する指数から)中国を代表する指数へと変貌を遂げ、ハイテク関連やEC関連のウェートが高まる」と予想している。
(財新記者:岳躍)
※原文の配信は6月16日
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