「香港経済は深いリセッションに突入した」。香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は、5月4日の記者会見でそう述べた。香港政府が同日発表した2020年1~3月期の域内総生産(GDP)速報値が前年同期比-8.9%と、四半期統計をさかのぼれる1974年以降で最大の落ち込みを記録したのを受けた発言だ。
新型コロナウイルスの流行は、香港の経済活動と域内のサプライチェーンに深刻な打撃を与えている。経済への波及は中国本土で新型コロナの流行が拡大した1月から始まり、3月以降は世界的大流行に発展したためさらに影響が深まっている状況だ。
香港は2019年のGDP成長率が-1.2%と、反政府デモや米中貿易摩擦の余波で10年ぶりのマイナス成長を記録した。そこに新型コロナが追い打ちをかけ、四半期ベースのGDP成長率は2019年7~9月期から3期連続のマイナスとなった。
輸出、消費、投資の『トロイカ』がすべて失速
GDPの構成要素を見ると、1~3月は財の輸出が前年同期比-9.7%、財の輸入が同-10.9%と、サプライチェーンの混乱による貿易の停滞が数字にはっきり表れた。また、サービスの輸出は同-37.8%と過去最大の減少幅を記録。香港の基幹産業のひとつであるインバウンド観光が大打撃を受けたことを反映している。
内需の要素も、1~3月の個人消費は前年同期比-10.2%と大幅に落ち込んだ。新型コロナの防疫対策で個人の行動や商店の営業が制約を受けたことに加え、観光や貿易の不振で失業が増加したことも消費者心理を冷え込ませた。先行き悲観から設備投資や不動産開発投資も縮小しており、1~3月の総固定資本形成は前年同期比-13.9%だった。
「輸出、消費、投資という経済を牽引する『トロイカ』がすべて止まってしまった状態だ」。財政長官の陳氏は会見でそう述べ、香港経済の短期間での回復は難しいとの見解を示した。これに伴い、香港政府は2020年のGDP成長率の見通しを「-4~-7%」に下方修正した。
(財新 駐香港記者:劉雁菲)
※原文の配信は5月4日
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