その日、将也にLINEを打った。
「昨夜のZoom合コン、ずいぶん盛り上がったみたいね」
しかし、ここまで打って結局は送らずに、文字を消した。38歳の自分が10歳近く年下の女性に焼きもちを焼いていると思われるのは、かっこ悪いと思ったからだ。
「昨日の夜、木村さんたちとZoom合コンやったって聞いたよ。たまには息抜きしたいよね。そっちはコロナの状況どう?」
このLINEを送った。すると、将也から、こんな返信がきた。
「合コンっていうか、ただの飲み会だよ。もしかして今日は出社? 木村に聞いたの?」
「そうだよ。楽しかったって」
すると、笑顔で笑うキャラクターのスタンプが送られてきた。
「コロナ、いつ収束するのかな。収束したら大阪行くね」
「当分収束は難しいんじゃない?」
気のせいか、返信が素っ気ない気がした。
そして、ゴールデンウィークに入り、世の中は “ステイ・ホーム”一色。飲食店、映画館、ライヴハウスなどの人が密で集まる場所は休業となり、普通に営業しているのは、日用品を買うスーパーやドラッグストアで、これまでとはまったく違った日常が繰り広げられた。
遠距離になって以来、将也との関係に少し距離ができたのを感じていたのに、コロナウイルスの蔓延で身動きができなくなってからというもの、その距離がますます広がっていくのを感じるようになった。
緊急事態宣言が明けてみたら
そして、5月25日に安倍総理により、緊急事態宣言の全国的な解除が表明された。
ただ解除されたといっても、一気に元の生活に戻ることはなく、会社では引き続き社員が時間帯をずらして交代で出社し、リモートワークが続けられていた。
いつになったら、将也の東京出張が再開されるのか。いつになったら自分が関西に行けるのか。そう思っていたのだが日を追って、“大阪は感染者が0”と報道されることも増えて行った。
6月に入り、秀実は週末を利用して将也に約3カ月ぶりに会いに行こうと思った。
そのことをLINEで告げると、「話したいことがある」と返信がきた。
「話したいことって何?」
「今回のコロナ騒動があって、親が“早く結婚して身を固めろ”とうるさくて。結婚することにした」
さらに、こんなLINEが来た。
「こっちに戻って1年暮らしてみて、関西は生まれ育った場所だから住みやすい。結婚したら、しばらくはこっちで働くと思う。秀実さんは、東京本社の広報でも中心的な人だから」
だから、何なのだろう。何が言いたいのかわからなかった。ただ結婚相手が自分ではないことは、わかった。
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