秀実は私に言った。
「結婚することになった。あなたは、バリバリ仕事をする人。そういう人と僕は、結婚できないと言いたかったのでしょうか? というか、最初から、私のことは結婚相手として見ていなかったんでしょうね。今、振り返ってみると、『付き合ってください』と言われたこともなかったし。『好き』とか『愛している』とか、恋人同士が交わすような会話もなかった。ただそれは、彼特有のテレなのだと私は思っていたんです」
“付き合っていた”と思っていたのは秀実だけで、将也にとって秀実は、友達以上恋人未満の存在だったのかもしれない。
秀実だけではなく、こうした恋愛をしている女性は意外に多いのではないか。「付き合ってください」という言葉もなく男女の関係になって、そこからは定期的に会うようになる。そして、会えば体の関係を持つ。
女性が1人暮らしだったりすると、彼が家に泊まりに来るようになる。彼のために甲斐甲斐しく料理を作り、恋人同士のような暮らしが始まる。女性の頭には、“結婚”が灯るが、男性は“結婚”という言葉をいっさい出さない。
こうしたケースは、女性が年上、男性が年下のことが多いように思う。
私のところに面談にくる30代後半~40代の女性の多くが言う。
「30歳を過ぎてから、年下としか付き合ったことがないんです」
年下としか付き合ったことがないのに、結局は独身のまま、歳を重ねてしまったのはなぜなのだろうか。男性が女性を自分の大切な存在だと感じていたら、ほかの男性には渡したくないと思うはずだ。結婚して、自分だけのものにしたいと考えるはずだ。
年上女性だと男性も楽なのだろう。年下のようなわがままを言わない。割り勘にしても文句を言わないし、たまにはおごってくれる。女性が1人暮らしだったら、家に行けばホテル代も浮く。ことに仕事のできるバリキャリ美人は、取り乱したり、ヒステリックに泣き叫んだりしない。物わかりよく一緒にいてくれるから、いい潮時を見つけて去っていけばいい。そんなふうに年下男性は、考えていないだろうか。
“結婚”を考えない恋人と付き合うこと
私は、秀実に言った。
「いちばん結婚から遠い場所にいる女性は、彼氏がいない女性ではないんですよ。“結婚”を言い出さない男性と付き合っている女性なんです。“いつか結婚できるかもしれない”と女性は思っている。そして、その彼が好きだとほかには目がいかない。そのまま時間だけが過ぎていくんです」
もちろんこれは相手が年下に限ったことでなはい。結婚を言い出さない男性と付き合っている、すべての女性に言えることだ。
実は、数カ月前、同じ会社の36歳バツイチ男性と社内恋愛をしているという29歳の女性が入会をした。彼女が面談に来たときに、こんなことを言っていた。
「社内恋愛なので、私たちが付き合っていることは、会社の誰も知りません。この間、彼に“結婚”という言葉を出したら、『一度結婚に失敗しているし、今の俺は結婚を考えられない』って言われたんです。ぼやぼやしていたら、私は30になってしまう。今は私から彼に別れを切り出せずにいるけれど、きっと彼以上に好きな人ができたら、別れられると思うんです。婚活をして、結婚できる相手を見つけたい」
結婚をしたいのに、結婚を考えない恋人と付き合うのは不毛なことだ。
秀実は、私に言った。
「できるだけ早く結婚相手を見つけて、最後のチャンスに出産もしたいんです」
彼がいなくなった今、秀実は婚活のスタート地点に立った。これは、彼がいたときよりも、結婚に一歩近づいたという事だ。
これから、秀実の本気の婚活が始まる。
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