公然と消える「保育士給与」ありえないカラクリ

国も黙認する、都合のいい「弾力運用」の実態

ただ、「人件費8割」というガチガチの使途制限があっては、営利企業が儲けを出す余地が小さい。そこで営利企業の参入と同時に、委託費の弾力運用が大きく規制緩和されたのだった。

この規制緩和で人件費、事業費、管理費の相互流用が認められた。そして、人件費や園舎の修繕費、備品などの購入費を上限額なく積み立てられるようになった。

積み立てを目的外で使う場合は、社会福祉法人は理事会の協議が必要だが、そこで認められれば新しく開園する保育園の建設費用に回すことも可能となった。また、同一法人が設置する保育園や保育関連事業に委託費を流用することもできるようになった。

この規制緩和の前夜、厚生大臣だったのは小泉純一郎氏だった。2001年に小泉政権が発足すると、さらに規制緩和が行われた。

2004年3月、同一法人で運営する介護施設にも委託費を流用可能となった。続く2005年3月、委託費を流用できる金額が大きく緩和された。年度(4月から翌年3月まで)の収入のうち3カ月分、つまり年間収入の4分の1も弾力運用してよいとされたのだ。この時の制度変更について、当時の関係者は、筆者の取材に対して「失政だった」と本音を語っている。

大手が運営するA認可保育園の場合

大手が運営する都内のA認可保育園の財務情報を例にしてみよう。委託費のほか東京都独自の処遇改善費や市区町村独自の補助金を合計した収入が2億3000万円。そのうち人件費は約4割、事業費は平均的な1割かけられている。

給食調理やリトミックの講師料の業務委託費が2900万円、土地・建物の賃借料も2000万円かかり管理費は3割に膨らんでいる。A保育園の収入を弾力運用して約5000万円が、積立てや本部経費のほか系列のB保育園、C保育事業、新規開設の費用などに回されている

年間の収入の4分の1が流用可能であるため、制度上はA保育園では5750万円まで、他の施設の運営などに流用可能となる。本部で事務作業や採用活動などを行えば効率的だったとしても、実際に流用された5000万円の大半は、もともとはA保育園で全て使うべき収入だ。

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