アメリカの株高はちょっと楽観的すぎないか 6月以降も「再雇用の勢い」は維持されるのか

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ワシントンで白人警官に押さえつけられ死亡したジョージ・フロイドさんを追悼する民主党議員など。もはや追加経済対策がすんなり打ち出される情勢ではない(写真:AP/アフロ)

アメリカの5月雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比で250万人増と、大幅減少の事前見通しに反し大きく雇用が増えた。同様に失業率も13.3%と前月に比べ改善した。これは5月からの経済活動再開に加えて、中小企業従業員の給与補填のための政府による約5000億ドル(GDPの2%以上に相当)の返済不要の融資が、早急に実現したことも企業による再雇用を後押ししたとみられる。

雇用統計と失業保険統計の結果が大きく乖離

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発表当日の5日、雇用統計の結果により経済活動再開への期待からアメリカ株市場は大幅高となった。ビッグサプライズの要因はいくつか考えられる。

まず、経済封鎖によって戦後最大規模の雇用削減が3、4月に起きたが、コロナ問題で調査がしっかり行われなかったことなどから統計の精度が低下していたと見られる。さらに、労働市場の状況をリアルタイムに把握できる失業保険統計では5月に失業者がさらに増えると示されていたが、雇用統計では「失業者が減少、雇用が増加」となり、両統計の乖離がとても大きくなった。

雇用統計、失業保険統計のどちらが正しいかの判断は難しい。だが、雇用統計で示された5月の雇用増加(失業者減少)が、労働市場の状況を正確に反映している可能性が高い、と筆者は判断している。

その理由を3つ挙げると、(1) 経済再開とともに5月からGoogle社による移動指数、企業景況や消費者心理などが総じて改善しており、再雇用を始めた企業の動きと整合的、(2)アメリカと同様、カナダでも3、4月の大幅な雇用減の後、経済再開と同時に5月に雇用が増加、(3) 失業保険の処理遅れなどで失業保険統計が5月の労働市場悪化を過大に評価していた可能性がある、である。

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