コロナ危機を経てドル円はもっと動かなくなる FRBもYCCを採用し、日米金利差がなくなる
6月5日に公表されたアメリカの5月雇用統計が史上最大の番狂わせと呼ばれるほど良好な結果を示したことで金融市場はリスクオンムードに支配されている。今回の本コラムで雇用統計について仔細に議論するつもりはないが、市場予想との齟齬はもはや集計方法を含めた統計の精度に焦点が移るほど大きいものになっている。次回6月雇用統計は5月分の修正を含めた結果が注目されることになりそうだ。
ただ、統計精度に難ありとわかってはいても、もともとリスク許容度の改善ムードが広がっていたため、今回の雇用統計改善によって株式市場のセンチメントが背中を押されてしまったのは間違いない。全米で深刻化するデモも香港暴動も、これに応じた米中対立激化も、沸き立つ株式市場に水を差すには至っていない。
長期金利が上昇していることに注目すべき
こうした中、当面注目すべきは金利と株価の関係だと筆者は考えている。
3月下旬以降、FRB(連邦準備制度理事会)は金額を無制限とする国債購入プログラムを運営中である。しかし、無制限とはいえ、前の週に翌週の購入予定額がニューヨーク連邦銀行から公表される。この規模は発表以降、漸減傾向にある。
拡張財政路線と歩調を合わせる意味合いの大きい(と理解される)プログラムゆえ、金利情勢が落ち着く中で購入額も減ってくるのは自然である。だが、先週のアメリカの10年金利は1週間で0.2%ポイント以上、上昇したにもかかわらず、6月8~12日の国債購入予定額は1日当たり40億ドルと前週の45億ドルから減少させる方針が示されている。
「この程度の金利上昇であればFRBは介入しない」という意味であり、これは興味深い動きだろう。もちろん、「経済・金融情勢の改善を受けた金利上昇には介入しない」という思いもあるかもしれない。
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