コロナ危機を経てドル円はもっと動かなくなる FRBもYCCを採用し、日米金利差がなくなる

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しかし、FRBの本音を深読みすると、「株価上昇を止めない金利上昇ならば容認可能」ということではないか。裏を返せば、「金利上昇がいつ株価にとって重しとなるか」が問題であり、それを心配する局面に入りつつあると考えられる。現状の「企業部門の収益が激減する中での株価上昇」という構図は緩和環境、端的には低金利環境の継続を前提としているため、現状のような株高と金利高が併存する地合いは持続的とはいえない。

金利上昇が株価、ひいては実体経済の障害になってくると判断されれば、4月分のFOMC(連邦公開市場委員会)議事要旨で示唆された「中短期の国債利回りを特定の水準に抑制するのに十分な量の国債買い入れを行う」という提案が思い返される。いわゆるFRB版イールドカーブコントロール(YCC)の導入だ。

金利上昇と株価上昇の併存はいつまでも続けられるものではないから、これから米国債が増発されていくことに鑑みても、FRB版YCCが「次の一手」に選ばれる可能性は相応に高い。YCCの持続性自体はすでに日本銀行が実証済みであることも追い風になる。YCCがあったからこそ、2016年9月以降「うまく表舞台から姿を消す」ことに、日銀は成功した。これは市場参加者も認識するところだろう。

そもそもFRBによる金額無制限の国債購入は暗に金利水準を見ながら運営されていたのだろうから、実質的にはYCCは始まっていたとみることもできる。これを名目的に導入することのハードルは高くないと推測する。

いよいよ金利差なき世界が出現する

あえて日銀との最大の違いを挙げるとすれば、日銀はマイナス金利政策を導入していたため、「イールドカーブを立たせる」、すなわち長短金利差を拡大することが目的であったのに対し、FRBは「イールドカーブを押さえつける」、つまり長期金利を上昇させないことが目的となるという点だろうか。

後者のほうがより財政ファイナンスを疑われやすい建て付けであることはいうまでもなく、その意味でFRB版YCCのほうが本家よりも「危ない橋」を渡ることになりそうだ。だが、戦時中とも形容される現況下では、その導入も致し方ない、という整理になるのだろう。すでに史上初の7兆ドル台を突破しているFRBのバランスシートの規模を前に、いまさら、健全性の議論を持ち出す雰囲気も感じられない。

為替市場の観点からは何が言えるだろうか。影響は多岐にわたりそうだが、1つ確実に言えそうなことがあるとすれば、FRB版YCCは「金利差なき世界」においてレンジ相場が常態化していたドル円相場に「とどめ」を刺す一手になると思われる。

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