想定外だらけ「次期米国政権」襲う4つの難題 これまでにないほどの危機に直面している

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3つ目のサプライズは、3月下旬でもまだ予想されていなかった、コロナウイルス感染症(COVID-19)による荒廃である。公衆衛生の専門家は、近い将来に致命的なパンデミックがアメリカを襲う可能性があるとして警告していたが、これほど大きな被害をもたらすと予測していた者はほとんどいなかった。

6月初旬の時点で、感染者は約200万人、死者は11万人以上である。4000万人以上の雇用が失われ、失業率が数週間のうちに3.5%から15%近くまでに急上昇させた新型コロナは、第2次世界大戦後のアメリカ最大の危機であり、1930年代の大恐慌以来最大の経済的大惨事である。

4つ目のサプライズは、出来事としては意外ではないが、その影響は十分に予測されていなかった。5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで、丸腰で手錠をかけられ、警察に拘束されていたアフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイドが白人警官によって残忍に殺害された事件は、白人警官による丸腰のアフリカ系アメリカ人男性の殺害が相次いでいることに代表されるアメリカの人種的緊張の中で、最後の一押しとなった。

数日のうちに、抗議やデモは50州すべての600以上の都市や町、ほかの国々にまで広がった。このようにして、人種的不平等、刑事司法、そして有色人種、とくにアフリカ系アメリカ人に対する警察の暴力の問題が、一夜にしてすぐさま対処が必要な喫緊の問題となったのである。

次期政権を待ち構える難題

大統領選挙で誰が勝利するかにかかわらず、アメリカの次期政権は、おそらくこの1世紀ほどにおける政権が直面したどれよりも困難な、大きな課題に直面することになるはずだ。次の4つの問題には、時間、注意、資源をとくに集中的に配分しなければならなくなるだろう。

1つ目は、新型コロナによってもたらされた公衆衛生の危機をどう克服するかということである。そのためには、感染例をゼロにすること、あるいは少なくとも大幅に減らすことが必要であり、ウイルスによる死者をなくすことが必須である。信頼性の高い検査を必要とするすべての人が受けられるようにするためには、資源を投入しなくてはならない。ウイルスの免疫をつけるためのワクチンや、患者の治療や回復に有効な薬剤の開発の迅速化には、政府と民間の協力も必要であろう。

さらに、一部の公衆衛生専門家が秋にアメリカを襲う可能性があると予測している新型コロナの第2波に対し、最大限の予防を見据えた対策を講じる必要もある。毎年発生しているインフルエンザの流行と重なるようなことがあれば手に負えない事態となる可能性もあり、医師、看護師、病院施設、人工呼吸器、PPE(個人用保護具)などへの事前投資が新たに必要となる。

最後に、今後のパンデミックに対してアメリカがより効果的に対処できるようになるためには政府対応の改革が必要となるだろう。

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