ファーウェイ禁輸で台湾TSMCが迎える正念場 米国に新工場建設で禁輸影響を免れるのか

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2019年5月に発表されたファーウェイに対する禁輸措置では、製品に含まれるアメリカ由来の技術の合計金額が全体の25%を上回らなければ、ファーウェイへの部品提供が可能だった。そのため、当時TSMCの企業情報局シニアマネジャーだった孫又文氏は「TSMCの製品に含まれるアメリカ製の技術は24.999%よりもまだ少ない」と、禁輸措置の影響外であることを強調していた。

しかし、この1年間、アメリカ商務省は何度も対ファーウェイ制裁の抜け穴封じ策を発表している。輸出規制にかかわる25%という数字は10%に引き下げられ、これはTSMCをファーウェイのサプライチェーンから切り離す意図があったと見られている。そして、5月のファーウェイへの輸出規制強化により、事態はTSMCにとって他人事ではなくなったのだ。

禁輸のカギを握るアメリカの「許可」

商務省は5月15日にもう1つ重大な発表を行っている。それは、2019年の禁輸措置以来、ファーウェイとその関連企業に対し複数回にわたり延長してきた一時的一般許可証の再延長について、「今回が恐らく最後になる」と警告したことだ。

ファーウェイの既存製品やサービスの維持を目的とした取引はこの許可証によって制裁の対象外となっていたが、それが不可となればファーウェイやサプライチェーンに大きな打撃を与えるだろう。なお今回の延長は90日間だ。

輸出規制強化によりTSMCとファーウェイは完全に切り離されたのだろうか。半導体業界の関係者はこう言う。「確かにファーウェイとの取引には許可が必要となった。だが注意しなければならないのは『許可制』であって『取引禁止』ではないという点だ」

この点について台湾のシンクタンク・産業情報研究所の洪春暉・副所長も同様の指摘をしている。同氏はファーウェイ禁輸措置をめぐるカギは「アメリカの許可」にあるとした。今のところアメリカは許可の詳細を発表していない。今後、TSMCが慎重に対応すれば、ファーウェイへの製品出荷が認められる可能性もゼロではない。洪氏は「TSMCはアメリカ政府とそのあたりの条件を詰めているところではないか」と述べた。

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