日経平均2万3000円超でもあまり驚かないワケ 「2つのデータ」が中長期での株価上昇を示唆

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こうした「買い戻し」や「待ち切れない買い」によって、足元の株価急騰が支えられているとすれば、これらが一巡すると、短期的には株価は上昇一服、ないし軽い下押しを迎えると見込まれる。ただし、大幅な株価下落は見込んでいないし、述べたように、年末や来年に向けては、株価の上昇基調を予想している。

理由は、コロナ禍をくぐり抜けた世界経済・企業収益の回復だ。そうした景気回復の動きは、これまで全般的にはまだ見いだしにくかったが、一部の経済指標にはすでに表れてきていた。

「マインド系」のデータが足元で持ち直している

実は、さまざまな経済指標については、大きく2つに分けることができる。1つは、実際の経済活動を、サンプル調査により推計するもので、代表例としては鉱工業生産や小売売上高などが挙げられる。こうしたデータをハードデータと呼ぶが、ハードデータの4月までの実績値では、ほとんどの国で、コロナ禍による経済不振が示されていただけで、回復の兆しなどは見て取ることができなかった。

もう1つの経済指標は、ソフトデータと呼ばれる。これは、アンケート調査により、企業や家計の心理を推し量るものだ。代表的なソフトデータとして、日本の日銀短観や、アメリカのISM指数、ドイツのIFO指数といった、企業の業況感などを測るものと、主要国の消費者態度指数(あるいは消費者信頼感指数)などの、家計の心理を測るものとがある。このソフトデータが、足元で持ち直しを示している。

たとえば5月25日に発表されたドイツの5月分のIFO指数は、4月の74.3から5月は79.5へと大きく回復した。ただし、その内訳をみると、足元の景気に対する判断を示す現況指数は4月から5月に若干ながら悪化している。IFO指数全体の改善は、もう1つの内訳である予測指数の大幅な戻りによるものだ。

つまり、現在のドイツの景気は悪いが、先行き期待で企業の業況感が持ち直しているわけで、期待先行といった危うさがあり、楽観は半身の構えとすべきだ。それでも、企業の先行き期待は、人材採用や設備投資などの持ち直しという形で今後表れる可能性があり、明るい材料だとは言える。

アメリカでも、5月分の企業心理を示すソフトデータでは、フィラデルフィア連銀製造業指数(5月21日木曜日)、リッチモンド連銀製造業指数(5月27日水曜日)(日付は発表日、以下同様)などに、4月に比べての業況感の改善が示されていた。さらに先週は、最も注目される企業心理のデータであるISM指数が発表された。こちらも5月分は、製造業指数(6月1日月曜日)、非製造業指数(6月3日水曜日)ともに、4月を上回る数値となった。このように、企業心理というソフトデータがハードデータに先駆けて改善し、それが世界の株式市場を支えたと考えれば、足元の株価上昇自体は不思議ではない。

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