「原油暴落でも冷静」な株価は急上昇するのか 「キツネとタヌキの化かし合い」は終わりそう
最近の市場を最も騒がせたのは、原油先物市場のマイナス価格だろう。世界の指標となっているWTI原油先物5月限(ぎり)は最終決済日が4月21日(火)だったが、その前日の20日(月)には1バレル(約159リットル、バレルは樽の意味)あたりの価格が、なんと30ドル超のマイナスとなった。
それは市場参加者の驚きを呼んだが、マイナスということもさることながら、原油価格の下落自体が産油国経済の悪化やアメリカなどの産油業者の苦境を連想させるので、市場にとって決して好材料ではない。そのため、この2日間のアメリカの主要な株価指数は下落したし、それが翌日の日本株にも価格押し下げ圧力として働いた。
原油マイナス価格でも下げが限定的だった理由
とは言っても、日米等の株価が何日も下げ続けたとか、「暴落」と呼べるような下落率になったとか、そうした厳しい事態には陥らず、主要国の株式市場は平静であったと考えられる。
平静に株価が推移した背景の一つは、今回のマイナス価格は、WTIの先物5月限特有の事情が大きかったと考えられることだろう。
WTI先物の買いを決済するには、もちろん通常は、市場で反対売買の売りを行なって、損益を清算すればよい。ところが決済日まで買いを抱えていた場合は、実物の原油を引き取らないといけない(逆に売り手は、原油を渡さないといけない)。
原油先物市場には、現実に原油を取り扱う業者も参加している。決済日までWTI先物を抱えていても、原油を生産している業者は採れた原油を渡すことで先物売りを決済すればいいし(あるいは流通業者は手持ちの在庫を渡せばよい)、原油を販売している業者は原油を受け取ることで先物買いを決済し、手に入った原油を通常の販売先に売り渡せばよい。
ところが、足元の原油の需給はだぶつき気味で、在庫が積み上がっている。在庫を持つための原油タンクやタンカー(洋上在庫)が満杯の状態で、原油の保管コストがかなり高くなっていると言われる。
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