「原油暴落でも冷静」な株価は急上昇するのか 「キツネとタヌキの化かし合い」は終わりそう

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したがって、先物を買っていた業者は、決済日まで先物を保有して原油そのものを受け取り、多大な保管コストを支払うことになるよりは、お金を支払ってもよいから(マイナス価格になってもよいから)先物を売って、少なめの損失にとどめたい、という動機から売りに回り、史上初のマイナス価格がついてしまった、という展開になった。

また原油先物の売買を行なっているのは、そうした原油を取り扱う業者だけではなく、純粋に資金運用という目的で売買する投資家も多い。

そうした投資家のなかで、ぎりぎりまで価格動向を見極めていたが、先週月曜日の価格急落が始まってあわてて投げ売りし、価格のマイナス幅を大きく広げた、という面もあっただろう。実際、当日の先物価格下落は、1バレル=10ドルを割った辺りから加速したと言われており、そこで運用目的の投資家の売りが膨らんだと推察される。

原油価格の低迷の理由は需要減だけなのか?

こうした5月限特有の受け渡し要因を頭に置いて、別の原油先物をみると、マイナス価格が付いた月曜日は、WTI先物6月限の価格は1バレル=20ドルを上回っていた。また北海油田の油種である、ブレントの先物価格も、20ドル超だった。これはブレントの場合、決済日には現物を受け渡すほかに、差金決済も可能だったことによる。つまり原油先物のマイナス価格は、5月限特有の要因による部分が大きく、それを知っていた株式市場の反応が平静だった、と解釈できる。

このように、決済日前のごたごたが、原油先物5月限のマイナス価格を引き起こしたとは考えているが、では6月限が全く下落していないかと言えばそうではない。

マイナス価格騒ぎの翌日の21日(火)には、一時1バレル=6.50ドルまで大幅に下落した。その後は持ち直したものの、先週末金曜日は17.18ドルと、20ドルを割り込んだ水準にとどまっている。

この原油価格低迷の最大の要因は、需要の減退だ、との声も聞く。確かに新型コロナウイルスの流行で、世界全体の景気は後退が確実視され、エネルギーに対する需要も減少するだろう。

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