日経平均2万3000円超でもあまり驚かないワケ

「2つのデータ」が中長期での株価上昇を示唆

少し余談になるが、アメリカのISM製造業指数から非製造業指数を引いた差は、観察すると興味深い。

この両者の差を算出して何がわかるのか、という点だが、非製造業指数は、振れが相対的に小さい。その背景としては、非製造業のなかには、小売、外食、サービス、医療などといった、通常の経済状況においては景気変動に対してそれほど大幅には浮沈しない産業が多いことが挙げられる(今はコロナの影響があり、必ずしもあてはまるとは言えない)。

逆に製造業指数は振れが相対的に大きいと言える。そこで、製造業から非製造業の値を引くと、景気悪化に向かう時には製造業指数が非製造業以上に大きく落ち込んで、両者の差がマイナスに陥る。逆に景気が改善し始めると、差がプラスに転じることになる。

そこで2000年以降の両者の差をみると、ITバブル崩壊後の2001年の不況、2008~2009年のリーマンショック、2016年初の世界同時株安時に、大きく落ち込みをみせ、底をつけた。

そしてその後は、2019年8月に、それらの不況時にほぼ並ぶ水準まで、両指数の差は低下していた。つまり、すでに2019年後半にアメリカでは、「製造業不況」に陥っていたと推察される。そうした製造業不況をもたらした要因としては、「米中貿易戦争」やブレクジットの行方などが世界的な景気不透明感を広げ、企業が設備投資を抑制したことが、打撃になったと推察される(日本でも、こうした動きは製造業にとって収益悪化要因になった)。

とすれば、2019年後半に、アメリカの株価は、上記の他の不況時と同様の、下落を示していてもよかったわけだ。ところが多くの市場参加者は「トランプ政権は大統領選挙に向かって、株価を押し上げまくるから、株価は上がり続けてよい」「連銀が隠れQE4(量的緩和第4弾)を行なっており、金余りだから株価は上がり続けてよい」と、過熱した株価のさらなる上昇を正当化しようと叫び続けていた。そうした市場参加者による過信により、今年初め頃まで過度のアメリカの株高が続いたが、それがどのような「結末」を迎えたかと言えば、3月後半にかけての暴落だったと言えよう。

そのISM指数の製造業と非製造業の差は、4月分、5月分と、大きく持ち直している。したがって、経験則から言えば、アメリカの経済は回復に向かい始めている公算が高いと解釈できる。とすれば、足元の株価上昇は全くおかしくない。ところが今度は「コロナ禍で株価は暴落する、何も好材料がないのに株価が上がっているのはおかしい」と叫ぶ市場参加者がかなりいるのは、いったいどうしたことなのだろうか。

改善はハードデータにも現れている

こうしたソフトデータの改善を目の当たりにするなか、先週末のハードデータの1つとして発表された5月の雇用統計は、ポジティブサプライズだった。4月よりも失業率は上昇(悪化)し、雇用者数は減ると予想されていたところ、失業率は14.7%から13.3%に低下し、非農業部門雇用者数は前月比で251万人も増加した。

この雇用統計改善の要因のなかには、とりあえず雇用者を一時帰休させた企業が、活動再開に向けていったん呼び戻した、という、リバウンドもあろう。また失業率低下の背景には、職が見つからず求職活動をあきらめた人(この場合、失業者としてカウントされない)が多いのではないか、との指摘もある。

そのため、雇用がまた悪化方向に揺り戻される展開が将来否めない。だが、大きな流れでは雇用統計というハードデータも改善に向かい始めた(少なくとも底入れはした)可能性があると解釈できるだろう。ソフトデータからハードデータへの改善の広がりだとすれば、やはり中長期では株価上昇を見込んでよいと考える。

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