安倍政権の経済対策は日本を必ず弱体化させる この緊急策は何が根本的に間違っているのか

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需要不足どころか、むしろ過熱するはずだ。理由は以下の3つだ。第1に、財政出動が前代未聞、「空前絶後」の規模で出されるからだ。トータルでの需要消失は2008年のリーマンショックなどを大きく下回るはずだが、対策はそれ以上。当然、過熱する。

第2に、失われた需要は、すでに過去のものだ。直近の極めて厳しいイメージが残っており、データは過去のものが出てくるから、インパクトを過大に感じるが、前代未聞なのはいわば過去3カ月だけ。それは終わった。これからは需要が戻ってくる。足元の需要はほぼ失われていない。

第3に、これまで自粛、我慢していた需要が一気に(分野によっては徐々に)出てくる。この3ヶ月の自粛していた需要が出てくるから、通常の需要とあわせれば、需要は過熱するのである。

次は生産サイドを見てみよう。こちらも何も失われていない。これこそ、危機的な不況においては前代未聞の出来事だ。需要のところでも述べたように、新型コロナで部品の遅れなどサプライチェーンの一部が寸断されたが、生産設備が傷んだわけではない。金融資本も生産資本であるから、こちらも傷んでいない。だから、ほとんど何も変化がない。

つまり、需要、供給、両サイド何も傷んでいないのである。したがって、通常の経済に戻るはずである。しかも直ちに戻る。それどころか、過熱リスクすらある。

人々は「過大な不安」にかられている

しかし、これは世の中の私以外全員の意見と逆である。なぜか。

世の中の人々は何かを過大に危惧し、私はそれを軽視しすぎているからである。それは、人々の心理、不安心理であり、それによる行動制約である。この結果、消費が控えられ、生産も制約が生まれる。この3カ月のショックのトラウマがもっともひどいのが官邸であり、その次が消費者である。

一方、生産サイドは、トラウマはないが、消費者がどこまで不安がっているのかが不安で、腰が引けている。工場で間隔を空けないと、というのは工夫次第で何とかなる。またレストランで間隔を取るからキャパシティが減るのは、一部の特定分野での出来事であり、供給サイドの心配は全体としては要らない。

したがって、経済対策としては、この人々の不安心理をどう捉え、その変化をどう予測するかによって変わってくる。政策議論の前提条件として最重要であり、以下、私の見方を簡単に述べてみたい。

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