安倍政権の経済対策は日本を必ず弱体化させる この緊急策は何が根本的に間違っているのか

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次に、観光業に代表される「コロナ不況業種」への業種ごとへの対応、産業政策はどうすべきであろうか。筆者に言わせれば、これも中小企業対策と、基本的な考え方は同一である。

行動制限がなくなっても、需要がなかなか出てこないのは、一時的な萎縮によるものではなく、新しい現実であり、この萎縮は長期に継続するであろう。

したがって、観光消費を刺激するような、補助金、給付金は残念ながら基本的には無駄であり、中止するべきである。この局面で生き残る観光業は、新しい現実(本当は新しくも何でもない。21世紀の感染症の真実に気づいただけか、真の消費の価値に気づいただけなのだが)に対応できる企業だけである。そのような企業に対しては、継続的な支援を行う。やはり融資の支援が金銭的には中心になるが、人材育成への補助などもミクロ的な政策としては有効であろう。カネと人をやる気のあり、かつ真に人々に求められるサービスを供給できる経営者の下に集める。

次に、大企業に対してはどうであろうか。

アメリカでは大企業の倒産が相次いでいるのは、前回も書いたとおりだ。日本でも、アパレル大手であるレナウンが民事再生法を申請した。日本のアパレルの一部は危機に陥っており、地方の百貨店なども厳しい状態だ。日本のエアラインでも、ANAなどは世界の他の航空会社から見れば相対的に健全だが、それでも多額の資金調達に奔走した。

「企業内失業者」を抱え込ませるな

では、日本における大企業支援はどうするべきか。結論から言うと、資金繰り支援は最大限行う。一方、雇用に関しては、休業補償の支援をして失業を出さずに企業内にとどめるのではなく、失業対策を徹底的に準備して、リストラへの対応や、倒産した場合への備えに集中すべきと考える。

理由は、アメリカにおいても、日本においても、大企業の倒産は、ほとんどすべて構造不況によるもので、コロナショックはとどめになったに過ぎない、ということが中小企業のケースよりも、より鮮明に現れているからである。

大企業で立ち行かなくなる分野は、今後も衰退あるいは低迷する分野、あるいは成熟して拡大はあり得ない業種である。したがって、雇用を今一時的に支えても、リストラはタイミングを見計らうだけの問題であるから、企業内失業という形で企業に抱え込ませず、新しい産業や企業への移転を促進するべきである。

ただし、もちろん、個別企業の事情や見通しもあるはずだ。だから、ここを凌いで、今後、再び拡大路線に行くという決断をしている企業へは全面的に支援を行うべきである。それは、雇用調整助成金といった雇用に絞ったものではなく、銀行からの金融支援を最大限手厚くする、ということで、支出先を固定化せずに支援するべきである。今後の戦略で向けて、柔軟な戦略意思決定を支援するためである。

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