「〇〇美術館展」にたいした作品が来ないワケ

美術展の裏側はいったいどうなっているのか

平成になって、民放テレビ局が美術展の主催に入ることが増えたことは先に述べた。一番活発に動いているのは、ルーヴル美術館から3、4年に一度作品を借りて「ルーヴル展」を企画している日本テレビだろう。

フジテレビは「ニューヨーク近代美術館展」を定期的に開催しているし、TBSテレビはウィーン美術史美術館と2022年まで10年間のパートナー契約を結んでおり、2019年秋には国立西洋美術館で「ハプスブルク展」が開催されている。

テレビ局は時間のかかる出品交渉を嫌う傾向にある。新聞社は体質的に日本の学芸員とじっくり話し合って多くの内外の美術館から作品を借りる手間をいとわない。新聞社の事業部には大学で美術史を勉強した者も多く、なかには元美術館学芸員もいるからだ。

だが、テレビ局はそのような学術的な準備は苦手で、内容はすべて学芸員に任せる傾向にある。そこで「手っ取り早い」方法が、海外の有名美術館に億単位のお金を渡して「〇〇美術館展」を開くことなのだ。テレビ局は目玉となる作品が中に含まれるかだけを気にすればいい。

新聞社とテレビ局が組むと…

テレビ広告の長期的な減少に悩む民放は、「放送外収入」として通販や映画製作、イベント、配信など、テレビ番組のスポンサー収入以外の収益を求め始めた。展覧会はあくまでその「イベント」の一部なので、一応は展覧会の社会的・文化的意義を考える新聞社と違って、テレビ局はすべての展覧会で収益を得ることが基本にある。

その点でも有名美術館展は手間もかからないうえに、まず美術館の名前が有名だから当たる可能性が高い。そのうえ、特別番組を作れば宣伝になるうえ、番組スポンサーも得やすい。

新聞社とテレビ局が組むと双方にメリットがある。従来型のインテリ・中高年中心の新聞の読者層に比べて、テレビはもっと若く大衆的な層に訴えかけることができるからこの二者が組めば客層を相互補完できる。

民放テレビ局が展覧会の企画をしていなかったときは、新聞社はまずNHKと組むことを狙った。人気番組「日曜美術館」などでの紹介の可能性が増えるし、事業部員のまじめさも体質的にも近かったからだ。

ところがNHKは2001年以降、番組改変問題などで受信料不払い運動が起こったのをきっかけに「事業局」を廃止して、「視聴者総局」の下の「事業センター」にして、それまでの金儲け的な要素の強かった展覧会路線を縮小した。

その分、新聞社は民放局と組み始めたが、通常は系列局と組むのが常識だ。つまり朝日新聞社はテレビ朝日、読売新聞社は日本テレビ、毎日新聞社はTBSテレビ、日本経済新聞社はテレビ東京、産経新聞社はフジテレビだが、最近はこれ以外の組み合わせも増えた。

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