なぜ日本は「廃校」や「公園」を使わないのか 「570兆円の公的不動産活用」で世界一になる

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ニューヨークのMoMA別館PS1美術館。以前は「誰も寄り付かない危険な場所」だったが、今は現代アートの最先端の場所に生まれ変わり、雇用も生まれた。日本も一等地の公園や学校をもっと大胆に活用すべき時代が来た(写真:KEYPHOTO / PIXTA)
日本は超借金大国といわれる。だが一方で、国や地方公共団体が約570兆円もの膨大な「公的不動産」を持つことをご存じだろうか。この額は企業が所有する不動産470兆円よりも多い。公園や学校など一等地の不動産も多いのに、日本は欧米に比べ民間の力を利用した公的不動産活用で大きく遅れている。主要先進国では世界一遅れていると言ってもいいくらいだ。
ではどうすればいいのか。経営と街づくりの視点から鋭く切り込む木下斉(一般社団法人公民連携事業機構)、「共通価値経営」を標榜する野尻佳孝(テイクアンドギヴ・ニーズ会長)、リノベーションなどで優れた実績を誇る馬場正尊(オープン・エー/東京R不動産)の「3人の経営者」が、ホスト兼パネリストとして毎回ゲストを迎え「新しい日本の公共不動産のあり方」をビジネス視点で考えるのが「パブリック・アライアンス・トーク」だ。
第1回のゲストはカフェ・カンパニー社長の楠本修二郎氏。カフェを切り口にした店舗の企画運営だけでなく、地域活性化事業などでも独自の視点を持つ楠本氏を迎え、4人で公的不動産の未来を語る。今回のテーマは、廃校した学校(廃校舎)と公園だ。現在、日本では毎年約500のペースで廃校になっているという。また、さびれた公園を放置する時代はもう終わりにしなければならない。どうすればいいのか。

NYの「MoMA PS1」は何がすごいのか

――少子化で公立学校の統廃合が進んでいる状況で、廃校舎をどう利用するかが行政の大きな課題の1つになっています。すでに海外では廃校舎を再利用し、街全体の価値向上につなげている例がたくさんあります。代表的なのがNY(ニューヨーク)のロングアイランドシティ地区にあるMoMAの分館・「MoMA PS1」です。廃校舎を若手アーティストの作品を中心に展示する美術館として再生させ、荒廃していたエリアを現代アートの最先端の街に変え、ついには同じエリアに大手金融機関のシティグループが地上50階建てのビルを作るまでになりました。周辺エリアの価値向上にも大きく貢献した事例です。

「日本の公的不動産570兆円」の使い方について、4人のパネリストからさまざまなアイディアが出た(左から楠本、馬場、木下、野尻の各氏。写真提供:パブリックアライアンス事務局、各氏の個別写真も同様)

馬場:PS1に行くと、イレズミのある黒人やプエルトリカンの怖そうな若者が「PS1」と書かれたTシャツを着て立っているんです。実は彼らは、アートについて説明してくれる係員。PS1は単に現代アートの拠点というだけでなく、職にありつけそうもないような若者に、アートの最先端にあるカッコイイ職を提供し、誇りを持たせ更生させている。そういうコミュニティのインフラまで作っているところが優れているんですね。

野尻:PS1の運営はNGO(非政府組織)でしょう。NPO(非営利組織)もそうですが、日本ではこうした組織は「儲けちゃいけない」という風潮があるけど、NPOも儲けるべきだと思います。そうすれば、日本でもNPOによる廃校舎の有効な利用法が出てくるんじゃないかな。

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