なぜ日本は「廃校」や「公園」を使わないのか 「570兆円の公的不動産活用」で世界一になる

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――次は「公園」という公的不動産を見てみましょう。NYのマンハッタンにあるブライアントパークは、ベンチの代わりに可動式のいすが置いてあり、世界で初めてフリーWi-Fi(無料の無線インターネット接続)を飛ばした公園です。公園側は「イベント使用料」「園内レストラン賃料」「BID」「スポンサー料」という4つの項目を設け、事業者などからおカネを徴収します。収入の内訳は4つの項目ちょうど約25%ずつ。こうして、自ら運営管理費を稼いでいます。

NYのブライアントパーク。世界で初めて「フリーWi-Fi」を飛ばした公園であり、事業者からイベント使用料やレストラン賃料などを徴収、自ら運営管理費を稼いでいる。日本の都心もまだまだ変われる(写真:pisaphotography/shutterstock)

街を「行政待ち」でなく住民・所有者自ら関与して再生

野尻 佳孝(のじり よしたか)/株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役会長。1972年東京生まれ。1998年に独立しテイクアンドギヴ・ニーズを設立。2001年に株式上場、2006年東証1部。CSV(共通価値創造)経営を標榜、2017年春にTRUNK(HOTEL)の開業を予定

野尻:BIDって、日本ではまだなじみがないシステムですよね。

木下:BIDとはBusiness Improvement Districtの略で、特別区の一種です。

自分たちの街をもっとよくするためその地区の不動産を所有する人たちが固定資産税に連動する負担金を先に支払って、プロを雇って街の環境整備事業に投資し、周辺環境が改善され自分たちの不動産価値もあがって元を取るという仕組みです。

アメリカはもとより、ヨーロッパなどでも盛んにおこなわれています。

例えば街に隣接している公園が荒廃すると、周辺の不動産価格も下がります。しかし、逆にBIDを組成し、公園整備にも資金を拠出し、安全で楽しく人が集まってくれば、周辺の不動産価値も上がってくるんですね。経済と共益を合わせた仕組みです。

野尻:この仕組みを使った類似の事例は増えているんですか?

木下:そうですね。公園に関していえば、BIDだけでなく、ニューヨーク市はパークマネジメント部門が積極的に公園内での営業権を販売しています。それで収入を増やして遊具を整備したり清掃のレベルを上げたりしています。

例えば、ブライアント・パークは冬場には巨大なスケートリンクができますが、これはスポンサーシップでやります。日本にも昨今上陸したシェイクシャックというハンバーガーショップも元はマディソン・スクエア・パークで営業をはじためお店だったりします。

馬場:日本の場合、東京・渋谷区の宮下公園に米国のシューズ大手・ナイキがおカネを出してくれることになったのですが、当時はものすごい賛否両論が巻き起こって、結局ナイキはロゴマークすらあそこに出せなくなりました。この一件でもわかるとおり、日本では「公園は公共の管理下にあるので、勝手に企業が営業をしてはいけないのでは」という論理がまだ残っています。

木下:日本では財政が厳しくなり、公園の管理・運営の予算が限られているので、荒れたまま放置されている公園が増えています。今後、民間が入ってくることを排除するのではなく、「コミュニティ作りに積極的にかかわっていく」という要件を満たしたうえで、民間の力を導入する事例が増加してくると思います。既にその胎動は各地で見られていますね。

楠本:「スポンサード」は大賛成なんだけど、ブランド露出の「センス」が問題になることもあるんじゃないですか。「これ、やりすぎじゃない?」ということだってありうると思う。NYでは、そのへんのさじ加減は行政がやっているんですか?

木下:「デザインコード」についての委員会を作り、そこで厳しく見ています。海外の成功事例を見ると、デザインコードがしっかりしていて、委員会にもセンスのある民間の方に入ってもらっている。そういう工夫が必要ですよね。

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