なぜ日本は「廃校」や「公園」を使わないのか 「570兆円の公的不動産活用」で世界一になる

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楠本 修二郎(くすもと しゅうじろう)/カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長。1964年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートコスモスなどを経て2001年カフェ・カンパニーを設立、代表取締役社長に就任。コミュニティの創造をテーマに店舗の企画運営を展開するほか、地域活性化事業、商業施設のプロデュースなどを手掛ける

木下:そのとおりです。民間企業との違いでいうと、民間企業には株主がいて、利益は株主に配当しなければなりません。

一方、NPOも当然事業を通じて利益をあげてもいいのですが、それを配当してはけないというのが原則。利益の有無ではなく、その分配に縛りがあるわけです。その代りに利益を社会問題解決に再投資していくことが必要とされます。

だからもしNPOが手掛けるとしたら、単に「新しい施設ができて、そこが独立採算で回るようになりました」というだけでは不十分なんですよね。

そこに何らかの社会問題解決につながる新たなコミュニティができて、人々の生活が豊かになり、結果としてさらに住みたい人が集まり、地域も活力を取り戻す。そういう循環を生み出していく開発が求められています。

「町の小学校」が大人気のホテルに!

――もう1つ、アメリカの例を紹介します。西海岸・オレゴン州ポートランドの「ケネディスクール」です。ここは廃校舎(小学校)をブリュワリー(ワインやビールなどの醸造所)&ホテルにして、大人気になっています。当初、「学校をホテルにするなんて」と地元から反対論もあったのですが、当時の面影を忠実に残しつつ、住民からも「おいしいお酒が飲めて、泊まれる」と大好評を得ています。

楠本:ここは、教室が客室やレストランになっている面白いホテルです。今では、地元の卒業生の誇りになっているほどです。もちろん、遠くからやってくる客も多いのですが、もうおじいちゃんになった卒業生が、孫を連れてきて誕生パーティを開いたりして、地元からもとても愛されています。

アメリカ・オレゴン州のケネディスクール。学校の外観を維持したうえで、ブルワリーやホテルに。教室の雰囲気を残した客室が面白い、と世界中から宿泊客が訪れる。地元の住民も同窓会を開いたり、と大人気だ(写真:pisaphotography/shutterstock)
馬場 正尊(ばば まさたか)/株式会社オープン・エー 代表取締役。東北芸術工科大学教授。建築家。1968年佐賀生まれ。博報堂などを経て、2003年Open A Ltd.設立。都市の空地を発見するサイト「東京R不動産」を運営。東京の日本橋や神田の空きビルを時限的にギャラリーにするイベント、CET(Central East Tokyo)のディレクターなども務め、建築設計を基軸にしながら、メディアや不動産などを横断する活動をしている。2015年「公共R不動産」開始

野尻:講堂が映画館になっていて、上映プログラムも黒板に書いてあったり、ボイラー室がバーになっていたりするという、歴史ある学校の雰囲気をちゃんと残しているところが面白いんですよね。コンテンツがたくさんあるんですが、どの場所も、いつも満席です。

楠本:立地は決して便利なところにあるわけじゃないんですけどね。街の中心部から車で20分くらいのところにある。このケネディスクールのように、独自に「やり切る」ことが大事ですね。

馬場:コンテンツさえよければ、多少不便なところにあってもお客さんは来てくれる、ということを証明している事例ですよね。

木下:そうですね。クオリティの面で中途半端なところで妥協していない。そこが魅力になっているんです。

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