新入社員「試用期間切り」横行が十分ありえる訳 追い込まれた会社がその手で来たら対抗可能?

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そして、戦う場合は証拠を残したほうがいい。敵対が始まった段階で相手は敵になります。具体的に言えば、会社からのメールはプリントアウトしておいたほうがいいし、人事との面談はこっそり録音しておくのが望ましいのです。

人事部もさる者、そういった面談の際にスマホを先に預かるぐらいの非道はしてくるでしょうから、アマゾンか秋葉原で小型のボールペン型のレコーダーを買っておくぐらいの保険は今のうちにかけたおいたほうがいいかもしれません。

ただし、録音データは使いどころを考えなければなりません。相手の不当労働行為がはっきりと録音できるまでは、録音していることをほのめかしたりしてはいけません。できれば先に「法テラス」の弁護士さんに相談に乗ってもらって、どう使うかを判断したほうがいいでしょう。

本当は、そういった音声データは最後まで使わないほうがいい。相手の心象を確実に悪くしますし、「社内の会議の様子を勝手に録音するのは就業規則違反だ」という形で、思わぬ反撃も受けることになると思います。

目的と手段を間違えないこと

そして、目的と手段を間違えないことです。「せめて溜飲を下げるために音声データを使おう」として相手の面目をつぶしても、結局自分が退社することになっては何のプラスにもなりません。

「母のいとこの弁護士に相談したら、確かに会社のやっていることは不当だと言われたのですが、あなたとは敵対したくない。いったんこの音声データは人事部のあなたにお渡ししておきます」と言って、小型のレコーダーごと交渉相手に手渡して譲歩を促すような、あくまで交渉手段としての使い方を心がけるほうがいいと思います。

ただしその場合でも、音声データのコピーはいとこのおじさんの手元に残しておくのが望ましいです。念のために申し上げておくと、私は企業の違法行為を推奨しているわけでも、新入社員の過剰防衛をあおっているわけでもありません。あくまで相手がブラック企業だと気づいた場合のケンカの仕方という話だとお考えください。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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