大量廃棄・日本人に「地球1個分の生活」は可能か 「エコロジカル・フットプリント」という指標
福田:「ウール」「シルク」「アルパカ」なんて聞くと、自然素材でいいイメージがあります。しかし、消費者が環境に貢献しようと「ウール100%」とか「コットン100%」の製品を買うことが、実は環境負荷につながる可能性もあるというわけです。とくにシルクは、養蚕自体にものすごい環境負荷があります。
廃棄が高いシルクを100%使い切る
伊勢谷:シルクは水も大量に使いますよね。しかも、製造工程で原料から製品になるのはたった17%しかない。
福田:そうですね。あとはすべて廃棄されますね。
伊勢谷:「リバースプロジェクト」では、新しいシルク産業として、「愛媛シルクプロジェクト」というものを立ち上げてアプローチしています。これは製造工程を見直して、「シルクの原料を100%使い切るように変えていこう」というプロジェクトです。
福田:その中のひとつ、サナギを魚の餌にするってありますよね。
伊勢谷:そうです。ほかには「フィブロイン」という繊維状の物質を生体適合性にすぐれた手術用の縫合糸にしたりとかもあります。
福田:ほかには、どのようなことができますか。
伊勢谷:廃液から出る「セリシン」という物質には、肌をきれいにする保湿効果や紫外線抑止効果があることから、シャンプーやタオルなどに利用します。このように、製造段階で100%使い切ることができれば、シルクの「スコアリング」が大きく変わってくると僕は思っているんです。
福田:『アディダス「海洋廃棄物から靴を作る」本気度』で話した、商品にどのくらいの「環境負荷」(CO2の排出量や水の使用量など)があるのか、わかりやすく数値化して情報提供する「スコアリング」ですね。
伊勢谷:そうです。このように、製造工程のやり方を変えるだけでも、産業自体が変わる可能性があると思います。
福田:製品そのものの環境負荷だけでなく、アパレル業界にはもっと大きい問題があります。「つくりすぎによる大量廃棄」です。日本のアパレル産業は、年間「約13.5億点の需要」に対し、「約29億点の供給」があります。単純計算で「約15.5億点の余剰在庫」が生まれており、廃棄・焼却処分されるものも少なくありません。
伊勢谷:まさに「大量生産・大量消費のモデル」が行き着いた先ですね。ポストコロナの時代、真っ先にメスを入れなければならない社会課題だと思います。