カレーのココイチが、タイで人気沸騰のワケ デートも商談も「3000円カレー」を食べながら

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筆者も多くの日系企業を支援しているが、そもそも、日本の外食ブランドをそのまま海外に出せばうまくいくというのは幻想だ。勢いだけで海外進出して、痛い目をみたチェーンも少なくない。そう、ココイチがここまで成功しているにはワケがあるのだ。

では、皆様なら、どのような戦略で進出を図るだろうか。少し考えていただきながら、読み進めていただきたい。

高級ブランド化、「おしゃれな日本式カレー」演出

照明を落とし、高級感を演出

ココイチの標準的なカレーの価格は600円ほどだ。だが、シンガポールならともかく、そのままの価格で現地に持って行っても、そのまま受けいれられるのは難しい。タイのサラリーマンの標準的な月給は、日本の4分の1から5分の1(たとえば飲食店正社員なら、4~5万円程度)だ。

ということは、600円のココイチのカレーは、日本人の感覚でいえば4~5倍、「3000円くらいかけて、店に行くイメージ」だ。当然、日本と同じ価格を許容できる「海外在住の日本人」を対象にすればおのずとマーケットは限られる。しかし、安くすれば現地のローカルフードとの競合になるし、採算も取りにくい。日系外食チェーンがよく陥るジレンマだ。

そこで、ココイチが採った戦略は、日本では比較的リーズナブルなイメージを、なんと高級ブランドへと、転換することだった。日本式カレーをベースに、オシャレなブランドイメージを実現したのである。

価格を日本と大差ない200バーツ(600円)程度にするかわりに、写真のように、照明を少し落とし、高級感のある内装にして高級ブランドイメージを打ち出した(上の写真)。店内は、ゆったり食事をしてもらえるように一人向けカウンターはなく、テーブルが主体だ(下の写真)。しかも出店は、高級デパートなど超1等地中心に行い、日本式の高級カレー店のイメージを定着させた。

日本と全く異なる内装。高級感が漂う

ただ、逆に、核となるカレーの味だけは、変えなかった。味の決め手になるルーは、コストをかけてでも日本からの輸入にこだわった、コメも日本米を使用した。

日本と全く同じ味で、現地のカレーと差別化を図ったのだ。トッピング好きなタイ人向けに、具材トッピングや辛さを選べる楽しさもアピールした。

その結果、日本式の高級カレーのイメージを創りあげ、デートやら、ビジネス層までにぎわう店づくりを可能としたのである。

差別化の核となる味は変えないが、日本の成功には全くとらわれず、「市場に応じてブランドや店づくりを大きく変える」、という「変える点」「変えない点」の決断が、成功の1つ目のポイントだったワケだ。

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