日頃から理不尽な上司に対して、テレワーク環境で決行した部下たちの「謀反」もあります。そういった意味では、部下からのコミュニケーションに上司が痛む「逆のハラスメント」ともいえます。
とあるコンサル会社の課長、岩下さん(仮名)は、定例の課会のためメンバー全員をテレビ会議に招集したのですが、9人のメンバー全員が頑なに画面を共有してくれなかったと話してくれました。「テレワーク体制になってから、ずっと同じ状況です。エヴァンゲリオンのゼーレ状態っていうか。ちょっとマニアックな例えですが。とにかく無機質な会議で……」と、岩下さんは自嘲気味に話してくれました。
「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する会議風景は、確かに話題になりました。声は聞こえるものの、画面には“サウンドオンリー”と書かれた文字が見えるだけ。まさに画面を映さないZOOM会議状態です。
「よほど嫌われてたんでしょうね」
「何回か、画面を映すように求めたんですが……。よほど嫌われてたんでしょうね」という岩下さんが直面している状況は、事由の小ささゆえに厄介です。岩下さんもとりたてて必要以上には責めにくい。リアルなオフィス環境で働いていた時から脈々と存在したコミュニケーション課題のツケが回ってきたようです。
岩下さんは「今から挽回できるのか。でもコロナ禍を機に、改めてマネジメントに向き合います」と、最後は開き直った口調で語っていました。
緊急事態宣言が解除されたとしても、いったん火がついたテレワークの流れは止まらないでしょう。
実際のところ、今回、急に在宅勤務をはじめた「にわかテレワーカー」の多くが、そのメリットを実感しています。通勤時間がなくなる、集中して効率的に作業できる、介護や子育てと並行しながら仕事ができる――。パーソル総研の同調査でも、新型コロナが収束した後もテレワークを続けたいと回答した人は53.2%と過半数に達し、20代と30代の若者世代では6割を超えています。
コロナウイルス感染防止の観点だけでなく、これまで進みが遅かった働き方改革推進の文脈からも、テレワークを社会に根付かせていくことは重要です。しかしテレハラが広がっていくと、せっかく広がったテレワークが下火になりかねません。
ハラスメント対策を手がける「ダイヤモンド・コンサルティングオフィス」はテレワークにおけるハラスメントの実態調査を実施。テレワークで上司とのコミュニケーションに不快感を覚える部下は、なんと8割に上ることがわかりました。しかも職場への出社時と比較してストレス等が増えたと感じる会社員が66.4%。すでにテレワークアレルギーの兆候も表れています。
昨今は、なんでもハラスメントにつながってしまいがちな時代ですが、テレワークでもとうとうハラスメントが登場してしまいました。くしくも2020年の6月からパワハラ防止法が施行されます。より一層力を入れたハラスメント対策が必要になる中、コロナ禍に端を発したオンライン空間でのハラスメントへの対応も求められていきます。
アフターコロナのニューノーマルという言葉が話題になっています。オンラインベースの職場コミュニケーションにも新しい常識は求められるのでしょうが、その根本にあるのが普遍的な人と人との信頼関係にあることは言うまでもありません。
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