冒頭で紹介した島本さんが、置かれているのがまさに「密説」の状況です。
「常にパソコンの前にいるかチェックされていている」「チャット等で定期的に話しかけられる」といった「密視」は、オンライン3密で最も数多く聞かれる事例かもしれません。中には「ずっとテレビ会議をつなぎっぱなしにさせられて、1秒の隙もなくひたすら監視されています」(江澤さん・仮名・食品メーカー勤務)であるとか、「2分に1回、上司にZoomで撮影されます」(原田さん・仮名・小売業勤務)といったかなり極端な「密視」の例もあります。
「サボってないかが気になるのかもしれませんが、そう思われていると感じた時点で、こちらからの信頼感もなくなりました。部下の監視に気をとられてばっかりで、自分の仕事はしなくていいんですかね」と、原田さんはあきれ顔です。この環境に辟易した原田さんの頭には転職もよぎっているとのこと。
「必ず遅い時間にオンラインミーティングを入れてくる。あれは絶対に、残業しているか確認するため」というのは人材サービス系で新卒2年目の菅野さん(仮名・24歳)。「メールかチャットで伝わる内容なのに、必ずテレビ会議を設定されます。超時間の無駄」と、新居さん(仮名・マーケティング勤務)はいら立ちを隠しません。やたらと会議を招集する「密会」はリアルな職場にも見られますが、リモートでより増えているようです。
マネジメントにおいて“部下の仕事ぶりを管理すること”が重要な任務であることは、先述のとおり。しかしそこには、少なからず性悪説的な視点も生まれがちです。
テレワークをうまく生かせるコツは、性悪説ではなく性善説に立脚し、業務プロセスより成果を重視することとされています。リモート環境において、そもそも業務の進捗をこと細かく管理するには限界があります。
プライベートが見えすぎる問題
仕事ぶりが見えづらいことが、テレハラの温床となってしまう一方で、見えすぎることで起きてしまうハラスメントもあります。
テレワークをしていると必然的にコミュニケーションは、SlackといったチャットツールやZoomといったテレビ会議ツールを使うことになります。これらのツール自体はとても便利なのですが、家にいながらカメラを通して話すわけですから、いろんなモノも映り込みます。これまで知りえなかった相手のプライベートが見えてしまうことで、リモート環境では仕事場と自宅との境界が薄れていくことになります。これがセクハラの温床になってしまうのです。
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