コロナでも障害者施設を閉所できない深刻事情 何が起きているか分からない入所者もいる
「少し前に障害者施設で集団感染したことがニュースになっていましたが、僕らの施設もそうなるのは時間の問題だと思っています」
東京都内の障害者施設で働く男性は、はっきりとした口調でそう語った。男性は障害者施設のスタッフになって6年目、私生活では妻子がいる。
だが新型コロナウイルスの感染拡大に伴って都内に発令された緊急事態宣言以降の1ヶ月、妻や子どもに会えていないという。
“コロナショック”により、障害者施設にはどのような影響が及んでいるのかと聞いたところ、男性から「正直、お伝えしたいことがたくさんあります」という返答があった。
いま障害者施設で何が起きているのか――。所属を伏せ、匿名を条件に、取材に応じてもらった。
障害者施設を閉所できない理由とは
――コロナショックによって、障害者施設の現場にはどのような影響が出ていますか。
僕らの施設では、障害のある人たちが主にクッキーを作っていて、普段は学校や公民館、市役所、一般のお店などに販売しています。
ですが現在、学校は休校、公民館は閉館していて、販売先がなくなってしまっている状況です。販売したお金が彼らのお給料になるので、この状況が続けば彼らのお給料をつくり出すことが難しくなります。
実はいまも彼らはクッキーを作っていて、それをご家族の方に買ってもらったり、職員が買ったりしています。まさに“自爆営業”ですね。オンラインで販売している施設もありますが、そうしたところで買ってもらうこともなかなか難しいですから。
――障害者施設を閉所できないのには、どういった事情があるのでしょうか。
厚生労働省が障害者施設にサービス継続を求めているのは、僕らのような施設を閉めてしまうと、障害のある人たちの日中の介助を誰がやるんだという話になるからです。
僕が勤めているのは「生活介護事業所」といって、常に介護を必要とする人に対して入浴や排泄、食事の介助などを行う施設です。
通所しているのは、18歳以上の知的や精神、身体に障害のある人たち。重度の障害があり、自分一人では食事や排泄などができない人もいます。
一方で集団感染などのリスクを踏まえ、自主的に閉所している施設も多くあります。ですが、施設が閉所することで、そのしわ寄せがグループホームにいってしまっている現実があるんです。