コロナでも障害者施設を閉所できない深刻事情 何が起きているか分からない入所者もいる
それともう一つ難しいなと感じるのは、そもそも彼らの多くが、何が起きているかを理解できていないことです。
たとえば、僕らは外出するときにマスクをして、帰宅すれば手洗いをしますよね。障害を持つ人たちはそうしたことを意識的にやることが苦手でもある。「感染を防ぐ」ということの意味がわからなかったり、「外出を自粛しましょう」といっても理解できなかったりする。
何が起きているのかを理解できてない
そして何より彼らは「変化」が苦手です。たとえば、毎週末ガイドヘルパーと一緒に入浴施設に行くと決めている人がいて、外出自粛だからと説明しても、行かないと納得できない。普段と同じ生活ができないことで、暴れてしまうこともあります。
こうしたことをお話するのも、正直非常に抵抗があるんですが……。
――障害者施設で働く職員として、政府にはどのようなことを求めていますか。
まずはやっぱり、なかなか検査が受けられない状況の改善を願います。障害のある人のなかには基礎疾患や難病を抱えているケースも多く、感染が命取りになるかもしれません。
また検査を受けて一時的にでも陰性とわかれば、精神的な負担の軽減にもなります。
僕ら職員が見ている障害のある人たちが感染しているかもしれない、逆に自分たちが感染していて広めてしまっているかもしれない……そんな不安を常に感じながら仕事をするのは本当にストレスなので。
それと、やっぱり自爆営業は避けたいですね。一部の地域では障害のある人への支援として、収入が減った分を全額補填する方針を打ち出しています。そうした支援を市町村単位ではなく、国として行っていただきたいです。
さらに言えば、もともと僕ら障害福祉施設職員の給与水準はとても低いんです。ですが、慢性的な人手不足もあり、自分がたちが辞めてしまったら……という感情労働によって支えられている現状があります。
国からの補助金を上げ、職員の賃金の底上げや新たな人材確保につなげてほしいなと思っています。