ジム・ロジャーズが恐れる世界の最悪シナリオ リーマンショックとは逆の流れで経済悪化する

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

マーケットの下落のペースはロジャーズ氏にとっても予想外のものだったそうで、これほど大きく相場が下げたことは初めての経験だと話している。ただし、今回の下落の要因は「コロナウイルスだけではない」と主張してもいる。

これまでアメリカの株価はまったく下がらず、10年以上にわたり連続で上昇し続けてきたが、それもいまだかつて起きたことがない現象だ。とくに、下落直前の2〜3カ月に至っては一直線に上昇していた。つまり株は、限度を超えて高値をつけていたのである。

そのタイミングで、FRBは金利を引き下げた。また、企業債務も膨れ上がるばかりだったため、相場が下落する理由はたくさんあったということだ。

だからこそ、ロジャーズ氏は次のように指摘するのである。

メディアは必ず相場下落の理由をつくりたがる。マーケット参加者にとっても、今回のウイルスは、非常に使い勝手がいい理由となった。さらには、政治家もウイルスを言い訳にすれば、非難を逃れることができる。このような事態を引き起こしたのは、自分たちのせいではなく、ウイルスのせいだと。(13ページより)

リーマンショックとの違い

アメリカの失業保険申請数は、3月下旬には660万件にまで増加している。言うまでもなく、コロナウイルスの影響で苦境に陥った多くの企業が、数千人規模で従業員に解雇や自宅待機の指示を出していることが原因である。

もはやアメリカの失業率はリーマンショック時の10.0%(2009年10月)を大きく超えているが、ロジャーズ氏はここで、リーマンショック時と今回を比較している。

リーマンショック時は、まず金融危機が起こり、その後、金融から製造(2次産業、生産)、そしてサービス(3次産業、消費)という流れで経済が悪化した。最初に金融危機が発生したことでお金がまわらなくなり製造業が危機に陥った。生産が落ち込んだことで消費が悪化、サービス業も打撃を受けた。今回の経済危機は、それとは逆の流れで危機が広がっていくだろう。まず消費やサービスが落ち込み、企業業績が悪化、それが金融不安につながっていく。(14ページより)

ところで今回のコロナ危機はパンデミックであるだけに、中世末期の欧州で流行したペストと比較されることも少なくない。例えばカミュの『ペスト』がここにきてまた多くの人に読まれていることからも、それは推測できる。しかしロジャーズ氏は、そうした考え方に否定的だ。

次ページペストとは比較にならない
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事