ランボルギーニがフェラーリに肉薄できた理由 似て非なる戦略と今も生きる創業者の信念

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ランボルギーニの工場見学に参加し、組み立てラインへと足を踏み入れるならば、スタッフが足下にある煉瓦を指さしてこう説明してくれる。「貴方が踏んでいるこの工場の床は、ランボルギーニ社が創立された1963年のままです。当時も今も変わらず最新鋭のアッセンブリーラインがここで稼働しているのです」と。

当時から残る煉瓦の床。プレートには「1963 original flooring」と書かれている(筆者撮影)

そう、現在でもその”歴史的工場”は、組み立てラインの主力部分として活躍している。熟練工によりアヴェンタドールに搭載される12気筒エンジンが組み立てられ、構内にあるCFRP系複合素材製造棟で作られたシャーシをはじめとする各コンポーネントが集まり、ここで組み付けられる。もちろんこれらはすべて手作業だ。

10気筒エンジンを搭載するウラカンの組み立て工程は、12気筒のそれとは少し異なる。エンジンやボディなど、多くのコンポーネントはドイツのアウディグループのファクトリーから届けられ、このラインで組み立てられるのだ。

ある程度の量産が要求されるウラカンにおいては、生産の効率化が重要なファクターとなる。ランボルギーニは、そこをアウディグループとしてのリソース活用で解決する手法をとった。少ない人数によって高品質かつスピーディに製造する秘密である。

サンタアガタで作られることの意味

新しいカテゴリーであるウルスの生産に向け、ランボルギーニは18カ月間をかけて工場の敷地面積をそれまでの2倍となる16万平方メートルへ拡張した。これも創業者であるフェルッチオが、将来を見据えてサンタアガタという“田舎”に本拠を構えたおかげとも言える。

この本社の敷地内に管理・営業部門から開発部門、製造部門、そして品質管理部門まですべてが集約され、約1800名の従業員がここで働く。

「ウルス」のアッセンブリーライン(写真:ランボルギーニ)

ウルスの製造は、より効率化を追求して新たに作られた専用の組み立てラインで行われる。ウラカンと同様に、ドイツよりV8エンジンやボディなどが送り込まれ、ここで組み立てられるのだ。また、新たにウラカン用のペイント棟も新設され、作業の効率的とクオリティの強化を図っている。

このように、どのモデルにおいても製造工程の効率化のために万全の手法を彼らはとっている。しかし、クルマを組み立てるのは、あくまでの熟練した職工の手であることは変わりない。

そして、ここサンタアガタの歴史的な工場ですべてのモデルが組み立てられ、顧客の手元に渡るということが、ランボルギーニを名乗るうえで何よりも重要なのだ。創始者であるフェルッチオの神話を至る所に感じながら……。

越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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