天馬の名誉会長が激白「役員は総退陣すべきだ」 収納ケース「Fits」の会社でお家騒動

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名誉会長が株主提案を行う異例の事態になった樹脂製造中堅の天馬(撮影:編集部)
「問題を起こした取締役と、創業家である司家・金田家の取締役全員を退任させることが、私がやらねばならない最後の仕事です。経営陣が、社長派、反社長派を作り、社員のみなさんを巻き込むなどあってはならないことです」

家庭用収納ケース「Fits」などの販売で知られる、樹脂製造中堅の天馬(東証1部上場)が揺れている。渦中に立つのが、創業メンバーで名誉会長だった司治(つかさ・おさむ)氏(86歳)だ。4月16日に冒頭のようにしたためた手紙を従業員に送り、4月21日には6月開催予定の定時株主総会で現経営陣の完全刷新を求める株主提案を行った。

だが、会社側は「不当な経営介入は看過できない」として、4月23日に司氏を名誉会長から解任している。

ことの発端は、2019年12月に明るみに出た海外子会社での不正行為にある。ベトナム子会社が追徴税を減額する目的で現地公務員に対し計約2500万円相当の現金を渡していた。不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)に当たる可能性があるにもかかわらず、藤野兼人社長をはじめ監査等委員を除く取締役全員が容認、経費処理を工夫することで正当化しようとした。

この致命的な経営判断のミスについて、同社設置の第三者委員会は取締役会メンバー間での相互不信が原因の一つだと指摘。司氏と司氏の甥である金田保一会長(75歳)との対立構造が取締役会にも持ち込まれたことで、正確な情報の共有が阻害されたと分析した。そのうえで、司氏の経営介入を断固として排除する体制を整備すべきであると会社側に提言している。

渦中にある司氏が、株主提案を行った真意は何か。直撃インタビューした。 

創業家は経営から離れるべき

――経営陣の総入れ替えを求める株主提案を行いました。承認されれば、藤野社長(6月総会後に退任予定)に加えて、金田会長とその息子の金田宏常務、さらにはあなたの息子である司久専務の創業家出身者3人が、経営から離れることになります。

3人の兄と創業した天馬は、私たちの強いリーダーシップのもとで成長してきた。それだけ、創業家の影響力が大きい。社員は、創業家を大株主であり会社を作ってくれた存在であると考えてくれているので、創業家に対する忖度も自然に出てくる。

しかし、名誉会長として会長や社長に助言する私の姿をみた社員には、私の存在を強く意識させてしまった。同じ創業家である金田会長の存在も、社員は強く意識しているし、司専務、金田常務についても同様のことがいえる。

このような事態に至ったからには創業家は経営から離れないといけない。創業家が取締役に就任していることがもたらした弊害が、海外贈賄事件という形で表れたに過ぎない。そして、ほかの役員は今回の件(ベトナム子会社での問題)の責任をとりなさいということ。

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