テレビがコロナ前に戻るのがここまで難しい訳 あらゆる番組が制限だらけ、「煽り」もご法度

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海外ではサッカーやバスケットボールなどで「無観客試合」による再開が始まっているが、日本でも無観客試合を開催した場合、はたして地上波テレビは放送するだろうか。

実はスポーツ中継にとって、観客による歓声・熱狂は欠かせない要素なのだ。

観衆による興奮の渦がアスリートを巻き込んで競技を一層エキサイティングにしていく。視聴者は競技そのものと同時に「熱狂」も視聴しているのである。

オリンピックでも開催都市によってはあまり人気が高くない「野球」が、まばらな客入りの静かなスタジアムで試合が行われているのを見た人はいるだろう。

もちろん「オリンピック」だから視聴者は熱心に見るわけで、これがプロ野球ペナントレースの通常の試合だったら(熱烈なファンは別として)見る側が強い興味を持つことは難しい。

CS放送やDAZNなどの専門チャンネルでは確実に見てくれるファンはいるが、地上波ではスポンサーが撤退する可能性もあり、厳しいだろう。

ただそのDAZNも世界中のスポーツが「止まって」いるので、仕事に携わっていた制作会社は当然青息吐息である。

コンサートなどの「イベント」と同様に、スポーツイベントが元の状況に戻らない限り、スポーツ中継もまた復活はしない。

ニュース・情報番組はどうなる?

そして再び振り返って、ニュース・情報番組であるが、こちらは「緊急事態宣言の解除後」もいまとさほど変わらない中身が続くだろう。

日々の感染者数、政府・自治体の対応は伝えなければならない。またワクチンなどの開発状況、医療現場の様子、患者の声なども重要な情報である。

さらに「解除後の各地の様子」も大量に情報が出てくるので、さまざまな形で伝えるだろう。

感染者数が減ってきても引き続きコロナが視聴者にとっての最大関心事であることに変わりはないのだ。

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4月半ば頃まではテレビのニュース・情報番組は明らかに「ヒートアップ」をしていた。

その中で結果として「フェイクニュースだった」と言われかねないものも多く見受けられた。

いま「コロナ禍」が徐々に落ち着いてきた段階にきたからこそ、番組の担当者は「正しい情報を慎重に見極めて、視聴者にミスリードがないようにバランスよく伝えていかなければならない」ということを改めて肝に銘じるべきである。

バラエティー番組・ドラマ班などがそれぞれのジャンルで苦しみながら模索している中で、ニュース・情報番組がこれまでのコロナ報道のように「煽り」ととられる放送を続けていくことは、視聴者も許さないだろう。

村上 和彦 TVプロデューサー、京都芸術大学客員教授

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むらかみ かずひこ / Kazuhiko Murakami

1965年生まれ、神奈川県出身。日本テレビ放送網に入社し、スポーツ局に所属。ジャイアンツ担当、野球中継、箱根駅伝などを担当する。その後制作局に移り、「スッキリ」「ヒルナンデス」「ブラックバラエティ」「24時間テレビ」など幅広いジャンルで実績を上げる。2014年、日本テレビを退社し、TVプロデュースの他、執筆、講演会など活動の場を広げている。現担当 : BSフジ「プライムオンラインTODAY」監修演出など。

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